推理小説の部屋

ひとこと書評


冬のフロスト(上)(下)/R.D.ウィングフィールド (創元推理文庫)

★★★★ 

フロスト警部シリーズ長編第5弾。 少女連続誘拐事件、娼婦連続殺人事件、怪盗枕カヴァー、ショットガン強盗、 フーリガンの一団……デントン署管内で次々と起こる犯罪。 マレット署長のごますりのために人員不足を強いられる中、 フロスト警部の眠れない夜が続く……。

これまでも相当大変だったフロスト警部とデントン署ですが、 今回新たに加わった「芋にいちゃん」ことモーガン刑事の無能っぷりが、 多忙さに拍車を掛けてくれてます。

会話劇が面白いですよね。マレットとフロストの会話で、 いつの間にかマレットの責任にすり替わっているところとか、爆笑しました。

これであとは「A Killing Frost」を残すのみ。いつ文庫化されるのか、 気長に待つとします。

(2013.09.22)


いとま申して 『童話』の人びと/北村薫 (文春文庫)

★★★  

父が遺した日記に綴られていたのは、読書と映画を愛し、 童話や演劇の創作に情熱を傾ける青年たちの姿だった。

大正から昭和の風景と、当時の中学生・高校生・大学生の暮らしが、 生き生きとして伝わってきます。

(2013.09.08)


舞田ひとみ14歳、放課後ときどき探偵/歌野晶午 (光文社文庫)

★★★☆ 

舞田ひとみ11歳、ダンスときどき探偵に続く第2弾。

語り手のキャラ・高梨愛美璃(エミリー)は、エスカレーターの私立女子中学に進学し、 お嬢様キャラ織本凪沙とオレっ娘の萩原夏鈴と共に放課後をダラダラと過ごす日々。 そこに、同じ小学生のクラスメートだった舞田ひとみがヒップホップダンスと共に現れ、 持ち前の行動力と突飛な推理で謎を解決していく、という形。

これもタイトルに偽りありで、舞田ひとみは公立中学に進んでいて平日は会えないので、 実際に探偵をするのは放課後では無くてほとんど週末です。

複雑な家庭環境を持ち、崩壊した学級に通いながら、明るく健気に振る舞う舞田ひとみには、 もう少し幸福になってもらいたいものですが、 元クラスメート視点で見るとちょっと何考えているのかわからないキャラかも知れないですね。 犯罪の方も窃盗から始まって最後は誘拐まで行っちゃったり。

(2013.08.31)


ポリス猫DCの事件簿/若竹七海 (光文社文庫)

★★★☆ 

葉崎コージーミステリシリーズの中でも「猫島ハウスの騒動」に続く、 「猫島」シリーズの第2弾。前作は長編でしたが、こちらは連作短編集です。

前作ではやる気のない警官、という感じだった猫島派出所の巡査・七瀬くんですが、 今作では、ポリス猫DCの助けを得ながらも、なかなか鋭い推理を見せ、事件を解決に導いています。

連作短編ならではの工夫もなされていて、なかなか楽しめました。

(2013.08.29)


垂里冴子のお見合いと推理 vol.3/山口雅也 (講談社文庫)

★★★☆ 

お見合いをする度に事件が起こってお見合いが台無しになってしまう 「垂里家の呪い」に囚われているとしか思えない冴子。 ついに相手が水も滴る人間以外に……。

これまでの短編構成と少し異なり、短編1つに中編1つ、という2編構成。 そして中編の方には「日本殺人事件」の探偵・トーキョーサムが、 お見合いの相手として登場。2シリーズの探偵役の競演が楽しめます。 しかも冴子は獲られたダイイングメッセージから推理で真実を導く安楽椅子探偵、 トーキョーサムは現場に行って足で手掛りを集める泥臭い私立探偵、 とそれぞれの特色を活かしたコラボレーションになってます。

そんなに多作でも無い作家のシリーズ作品のクロスオーバーって、 何かとてもレアなものを見たようで、お得感が増しますね。

(2013.08.24)


殺意は必ず三度ある/東川篤哉 (光文社文庫)

★★★★ 

学ばない探偵たちの学園に続く、 鯉ヶ窪学園探偵部シリーズ第2弾。

鯉ヶ窪学園の弱小野球部から野球のベースが盗まれた。誰が、一体何のために? そして飛龍館学園との練習試合で鯉ヶ窪学園の4番の放った奇跡のサヨナラホームランを追ったセンターがバックスクリーンで見つけたのは、 試合に現れなかった監督の死体であった。 その傍には、盗まれたホームベースと、キャッチャーミットに収まったボールが。 それは「野球見立て連続殺人」の幕開けであった……。

探偵部の3馬鹿トリオが繰り出す漫才も楽しいシリーズ。 しかしそんなとっつきやすさからは想像もできないほどの多重トリックが仕掛けられていてとても楽しめました。 一歩間違えばバカミススレスレとも思えるようなトリックですが、 他のトリックとの組み合わせもあって非常に見せ方がうまかったと思います。

(2013.08.21)


虹果て村の秘密/有栖川有栖 (講談社文庫)

★★★  

小学六年生で推理作家志望の秀介と刑事志望の優希は、 夏休みに推理作家である優希の母親の生家のある虹果て村を訪れた。 小さな村で起こった殺人事件。密室、アリバイ、ダイイングメッセージ。 果たして2人は犯人を見つけることができるのか?

有栖川有栖がジュブナイル向け?と思ったら、ミステリーランドで出た作品だったんですね。 密室やダイイングメッセージを絡めた、非常にオーソドックスな本格ミステリに仕上がってます。 大人にはちょっと物足りない感じもしますが……。

秀介と優希のコンビはなかなか良いのですが、これ単品で、シリーズ化はされないのでしょうね。

(2013.08.17)


新参者/東野圭吾 (講談社文庫)

★★★★☆

日本橋の片隅で一人の女性が絞殺された。 日本橋署に着任したばかりの刑事・加賀恭一郎は、 彼女が関わった様々な店や人々へと聞き込みを続ける。 解き明かされていく小さな謎。 それらが積み重なった時、事件の全貌が明らかとなる。

一つ一つの謎は大したことの無いようなもの、 人情物でホロりとさせる短編が連なっている感じで、 とてもスムーズに読み進められました。

「事件で傷ついた人がいるなら、救い出すのが私の仕事です」 という加賀の言葉が良かったです。

(2013.08.15)


折れた竜骨(上)(下)/米澤穂信 (創元推理文庫)

★★★★ 

中世ヨーロッパを舞台とした、剣の魔法の世界における本格ミステリ。

呪われたデーン人が復活する。守りを固めるため騎士団や傭兵を強化したその夜、 ソロン島の当主・ローレントが殺された。東方から来た騎士ファルクは、 この殺人は、暗黒騎士の魔術により操られた「走狗(ミニオン)」によるものだと見抜く。 ファルクと従士の少年ニコラによる、「走狗」捜しが始まった。

魔法が存在する世界でも、本格ミステリは成立する、ということを示した作品。 考えてみれば、超能力が存在する本格だってあるわけですしね。

最後に「儀式」と称して容疑者を一人一人消去法で消していくところは、 まさに本格の醍醐味でした。

(2013.08.11)


長い廊下がある家/有栖川有栖 (光文社文庫)

★★★  

火村シリーズ4作を収録した短編集。

「長い廊下のある家」、オカルト雑誌の取材チームとたまたま居合わせた火村の教え子・日比野。彼が巻き込まれた不可能殺人とは?
トリックをまず思いついて、それを成立させるために、 プロットを緻密に組み上げていったような、職人芸の執念を感じました。

「雪と金婚式」、犯人に思い当ったはずの証言者が逆行性健忘に罹ってしまった。 果たして彼は誰を犯人だと考えていたはずのか?を火村が推理する、という変奏曲。

「天空の眼」、心霊写真とそれに関係した大学生の転落死。 まさかの有栖が真相に辿り着いてしまうという、異色中の異色作。

「ロジカル・デスゲーム」、火村が巻き込まれた命を賭けたゲームとは? まさかの「モンティ・ホールの問題」をそのままプロットにしたような話。 さすがにそれだけではなくて、火村が窮地を脱するところに一工夫はありましたが、 でもあれはあれで難しいと思いますが、どうやったんだろう……。

(2013.07.31)


あんじゅう 三島屋変調百物語事続/宮部みゆき (角川文庫)

★★★☆ 

おそろしの続編。 4話分収録。

ほのぼの系の話と、怪奇系の話が交互にある構成。怪奇系の話も、 怪異そのものよりも、人の心の醜さ奥に秘めた嫉妬心とかそちらの方が怖い、 といった感じです。

清太郎とおちかの関係もあまり進展がないまま、 恋敵になりそうな「青びょうたん浪人」青野利一郎も登場。 他にも偽坊主・行然坊や、新どんの寺子屋仲間・金ちゃん、捨ちゃん、よっちゃんがレギュラーに加わり、 賑やかになって来ました。 しかし本当に100話集めるまでやるんでしょうかね?

(2013.07.27)


オー!ファーザー/伊坂幸太郎 (新潮文庫)

★★★★ 

高校生の由紀夫には、四人の父親がいた。博識、スポーツ万能、女たらし、ギャンブル好き。 それぞれの特質を少しずつ受け継いだスーパー高校生・由紀夫の目下の悩みは、 試験勉強を邪魔してくる同級生の多恵子、幼馴染の鱒二、 そしてやたらと世話を焼いてくる四人の父親たち。 知事選のさなかにドッグレース場で鞄が盗まれたのを目撃したことから、 事件に巻き込まれていく。

元は地方新聞の連載で、単行本化・文庫化が遅れていた、 いわゆる「第一期・伊坂幸太郎」の最終作に相当するそうです。 そう言われてみると、ちょっと初期作品みたいなテイストが感じられるかも知れません。 伊坂作品ならではの会話の妙は本作でも存分に味わえます。 周りがボケキャラばかりなので、ひたすらツッコミに徹せざるを得ない由紀夫の、 高校生離れした老成感がいい味を出しています。

伊坂さんの作品では、節の区切りに独特のアイコンが配置してあって、 複数視点の小説の場合は、アイコンの種類が一人称視点人物を示していることが多いのですが、 今回の場合は悟を示す「本」、勲を示す「バスケットボール」、葵を示す「ハート」、 鷹を示す「金」の4つが常に配置してあって、 該当する「父親」が登場する場合はそのアイコンが強調される、 という仕組みになってます。 これがなかなか効果的で、読み進んでいくと、 どのアイコンも強調されていない節に出会った時に、 「お父さんたち、誰も出てこないけど、由紀夫一人で大丈夫か? またトラブルに巻き込まれるのでは?」 とやたらと不安になってくるんですよね。 まさに読者がもう一人の父親になったような感覚でした。

(2013.07.20)


No.6 #8/あさのあつこ (講談社文庫)

★★★  

No.6もクライマックス。確か#9で完結だと聞いています。

ヒロイン沙布との再会。しかしあさのあつこ作品の歴代ヒロイン同様、 不遇な最期を迎えます。

紫苑、紫苑、あなたの傍らにいるのは、なぜ、彼なの。なぜ、わたしじゃないの。 あなたと共に生きていくことをわたしはなぜ、許されなかったの。 彼がいなければ、あなたはわたしを愛してくれた?

という沙布の呟きが、あさのあつこ作品歴代ヒロインの嘆きに聞こえました。

(2013.07.17)


キケン/有川浩 (新潮文庫)

★★★☆ 

ほぼ99%男子校な工科大学である成南電気工科大学のサークル「機械制御研究部」通称【キケン】。 部長「ユナ・ボマー」上野と、副部長「大魔神」大神の二人の二回生に強引に勧誘された、 元山と池谷。上野のあまりに破天荒な実験に振り回されながらも、 段々と慣れていく一回生たち。これは、理系男子たちの魂の青春物語である。

「お店の子」元山の回想視点で語られる物語。 次々とツッコミが入る会話が楽しいですね。 それまでのおちゃらけエピソードから一転、ラストの黒板は反則ですね。

(2013.07.16)


モルフェウスの領域/海堂尊 (角川文庫)

★★★  

両眼失明の危機にあったた少年・佐々木アツシは、特効薬の許可を待つために、 世界初の「コールドスリープ」技術による5年間の「凍眠」を選んだ。 彼の「サポーター」日比野涼子は、目覚めた彼を守るために驚くべき選択をする。

これまでの作品が既に存在する医療に関わる問題を提起するスタンスだったのに対して、 こちらはもしこういう技術が将来出来たら、こういう問題が起こるだろう、 という仮定に基づいた話になってます。 しかしどんだけ官僚嫌いなんだか。

田口先生や師長になった如月翔子など、これまでの桜宮サーガの登場人物が次々と出てきます。 続編「アクアマリンの神殿」も執筆されているようです。

しかし書き始めた動機が、辻褄合わせの為ってのが凄いですね

(2013.07.14)


四畳半王国見聞録/森見登美彦 (新潮文庫)

★★★☆ 

「四畳半神話大系」の直接の続編というわけではありません(版元も違うし)が、 森見先生の京都学生シリーズ(?)の世界観は共通しています。

「天狗」「樋口」「招き猫」 「図書館警察」「自転車にこやか整理軍」「人間関係研究会」「福猫飯店」 「印刷所」「大日本凡人會」「四畳半統括委員会」「黒髪の乙女」 「マンドリン辻説法」「鮨詰め鍋パーティ」「水玉ブリーフの男」などなど。

全ては阿呆神の思召すままに。

(2013.07.06)


丕緒の鳥/小野不由美 (新潮文庫)

★★★☆ 

12年ぶりに刊行された、オリジナル短編集。4編の短編を収録。

「丕緒の鳥」は、慶国において、即位の礼で行われる「大射」の儀式で、 鳥に見立てた陶製の的を創る陶工である丕緒の話。 王に伝わらなかったことで絶望していた丕緒が、 新王陽子に出会って救われる物語。架空の役職なのに、 その役割が伝わってくる描写の細かさが見事ですね。

「落照の獄」は、治世120年の名だたる法治国家「柳」における、 死刑を巡る裁判官の苦悩の物語。十二国記の枠を外しても通用しそうな、 普遍的な死刑に対する2つの考えの激突と苦悩が語られています。

「青条の蘭」は、一読しても国がはっきりとしなかったんですが、 どうやら「雁」が舞台のようですね。 尚隆が王になる直前の時代、ということでしょうか。

「風信」は、再び慶国が舞台。陽子の前の女王が、嫉妬のために、 国中の女を排除しようとして、その犠牲になった民の物語。 民の絶望と無縁に暮らしているように見える暦作りの役人達が、 民に希望をもたらすラストが良かったです。

(2013.07.02)


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