推理小説の部屋

ひとこと書評


アクアマリンの神殿/海堂尊 (角川文庫)

★★★☆ 

モルフェウスの領域で冷凍睡眠についた少年・佐々木アツシは、 冷凍睡眠から目覚めた後、失われた時間を取り戻すために中学校に編入する。 冷凍睡眠中の睡眠学習で既に高校を越えるレベルの知識をつけていたアツシだったが、 中学では目立たないように200人中100位を目指していた。 しかしそんな彼の前に、全てを見抜いたような美少女・麻生夏美が現れ、 二人はお互いに不可侵な条約・ドロン同盟を結ぶ。

いつものような医療物の側面も持ちつつ、近未来SFであって、学園青春物でもあります。 理不尽な女王・夏美、ボクシング部の蜂矢、不幸に憧れる文学少女・野麦、 などドロン同盟の面々がキャラが立ってて面白かったです。

(2016.06.29)


Another エピソードS/綾辻行人 (角川文庫)

★★★☆ 

Anotherの外伝的作品。 見崎鳴があの年の夏休みに体験した、自分の死体を探す幽霊との邂逅の話。

ホラー的要素を、一つ一つミステリへと解体していく過程が相変わらず丁寧です。

本作品自体は外伝的位置づけですが、続編にあたる「Another 2001」というのを執筆中で、 それへのつなぎという役割があるようですね。

(2016.06.26)


僕だけがいない街 Another Record/一肇・原作:三部けい (角川書店)

★★★  

真犯人の手記をメインにしたスピンオフ小説。

まあ、基本漫画のストーリーをなぞるだけなんですが、 真犯人の弁護人となったケンヤが、タイムリープの秘密に気付くあたりは面白かったですね。

(2016.06.26)


サヴァイヴ/近藤史恵 (新潮文庫)

★★★☆ 

「サクリファイス」「エデン」に続くロードレースシリーズ第3弾。今回は6作を収録した短編集。

協調性ゼロの天才クライマー・石尾が中心に、ベテランの赤城の視点で進む話が多いですが、 ヨーロッパに渡ったアシスト白石も出てきます。

チーム競技でありながら個人競技という、ロードレースの特殊性がよくわかるエピソードが詰め込まれてますね。

(2016.06.10)


スカル・ブレーカ/森博嗣 (中公文庫)

★★★☆ 

シリーズ第3弾。とある誤解から城に連行されたゼンだったが、 彼を襲ったのは理不尽な蹂躙だった。

段々人間らしさを獲得しつつあるゼンですが、 ヤナギと出逢ったことで、また一段階高みに達した模様。 ノギとゼンのずれたやり取りがとてもほっこりしますね。

(2016.06.05)


幻坂/有栖川有栖 (角川文庫)

★★★  

大阪にある七つの坂・天王寺七坂を舞台にした、ホラー短編集。

ホラーと言っても、人外の者が出てくる、というだけで、 そんなに怖いわけではないんですが。基本的に全話の繋がりはないんですけど、 その中で2作に登場した霊感探偵・濱地はなかなか魅力的なキャラクターでした。

(2016.05.29)


燦(7)天の刃/あさのあつこ (文春文庫)

★★★  

文庫書き下ろしシリーズ第7弾。ついにこれまで日陰のヒロインだった篠音が高らかに宣言します。 「今度は私のターン」。

何かもう、今から常陸屋の行く末が案じられて、気の毒でしかない。 田鶴の政治の腐敗の温床であるだけでなく、篠音の身請けまでしようとしているなんて、 どう転んでも悲惨な未来しか待ってないですよね。ご愁傷様です。

(2016.05.20)


空飛ぶ広報室/有川浩 (幻冬舎文庫)

★★★☆ 

不慮の事故で幼い頃からの夢を断たれた元・戦闘機パイロットの空井が配属されたのは、 航空幕僚監部広報室だった。そこは待っていたのは、ミーハー室長の鷺坂、 ベテラン下士官・比嘉、がさつで大雑把な片山、残念な美人・柚木、柚木のお目付け役・槇、 といった一癖も二癖もある面々。さらに自衛隊嫌いの帝都テレビのディレクター・稲葉リカもいちち絡んできて、 果たして空井は新たな夢を見つけることができるのか?

ドラマ化されましたが、ドラマは未視聴。有川作品らしく例によってのラブコメ要素も入っていますが、 解説にもあるように少し薄め。 広報というニッチなテーマでも、しっかりエンタテインメントに仕上げるあたり、さすがですね。

(2016.05.20)


はるひのの、はる/加納朋子 (幻冬舎文庫)

★★★★ 

ささら さやてるてるあしたに続く、3部作完結篇。

幼い頃から幽霊の見えるユウスケは、ある時「はるひ」と名乗る少女と出会う。 それ以来、彼女はユウスケの前に現れては、幽霊に絡んだ「お願い」をして行くのだった。 高校生になってクラスメートとなった二人だったが……?

「憑依」ネタに、さらにタイムリープ要素が絡んで、前2作とは大分趣旨が変わっている感じですが、 これはこれでとても面白いですね。各話の登場人物同士が少しずつ絡んでいて、 それらの種明かしがされるのがまたカタルシスです。

(2016.05.16)


スチームオペラ 蒸気都市探偵譚/芦辺拓 (創元推理文庫)

★★★☆ 

蒸気機関がメインの動力として進化したもう一つの「地球」におけるSF本格ミステリ。 蒸気都市で次々と起こる完全犯罪。宇宙で発見された「繭」の中から出てきた少年。 果たしてその真相は?

スチームパンクな世界観の構築っぷりが見事です。そしてその世界観そのものが、 メインのトリックに奉仕しているという、芦辺さんらしいアクロバティックな作品。

少々くどいくらいの世界観の描写が、しっかりと伏線になっているので、 SFとしてもミステリとしても楽しめる作品になってます。

(2016.05.15)


カンナ 京都の霊前/高田崇史 (講談社文庫)

★★★  

「カンナ」シリーズ第9弾、完結篇。

聡美、死んでませんでした。さすが、毒薬のスペシャリストの家系、 体は弱いものの、毒に対する耐性はそれなりにあったということでしょうか。

甲斐のスーパーマンっぷりが凄まじいことになってますね。

毒草師も出てきて、「カンナ」シリーズとしては終わりでも、 今後キャラクターが他の作品に出てくるってことはありそうですね。

(2016.05.05)


カンナ 出雲の顕在/高田崇史 (講談社文庫)

★★★  

「カンナ」シリーズ第8弾。ラス前。

急に現れた(ように見える)最後の敵、玉兎。そして急に祭り上げられた竜之介。

しかしラスト、甲斐と婚約者の聡美、そして貴子の三角関係を解消するためにまさかそんな手に出るとは。

(2016.05.05)


夢幻花/東野圭吾 (PHP文芸文庫)

★★★☆ 

花を育てるのが趣味だった老人・秋山周治が殺された。 第一発見者である孫娘の梨乃は、現場から黄色い花の鉢植えが消えていたことに気づく。 果たして黄色い花にどんな秘密があったのか?

様々な人達がそれぞれの思惑で動いて、複雑な関係を形勢していくあたり、見事ですね。 梨乃と蒼太が探偵役としてその複雑な関係を解きほぐしていく様が心地よいです。

(2016.04.24)


カンナ 天満の葬列/高田崇史 (講談社文庫)

★★★  

「カンナ」シリーズ第7弾。

今までは、他の陰謀に巻き込まれる、って感じでしたが、ハッキリと狙われるようになってきましたね。 そして志乃芙の妹・冴子の旋律の正体。どうやって決着させるんだろう。

(2016.04.17)


土蛍 猿若町捕物帳/近藤史恵 (光文社文庫)

★★★☆ 

久しぶりの「猿若町捕物帳」シリーズの短編集。3編の中編+1編の短編を収録。

千蔭、梅ヶ枝、巴之丞の三人の関係は、進展しそうでなかなか進展しませんね。 今回、梅ヶ枝がまさかの身請け?という事態に発展したので、 これをきっかけに何か三人の関係が変わったりするんでしょうか。

(2016.04.14)


ガソリン生活/伊坂幸太郎 (朝日文庫)

★★★★ 

望月家の自家用車・緑のデミオ(通称「緑デミ」)目線で送られる、 少しスリリングでほっこりする物語。

長男・良夫も大ファンだった、一般人と結婚して引退した人気女優・荒木翠が、トンネル事故で焼死。 その現場をスクープしたパパラッチ・玉ちゃん、 長女・まどかの恋人江口が巻き込まれたトガシさんのトラブル、 聡明な次男・亨が合っていたいじめ、などなど、 望月家をめぐる様々なトラブルが、やがて絡み合っていき……。

車目線ってのが楽しいですね。車輪が多いほど尊敬される(貨物列車さんマジリスペクト)一方、 二輪車とはコミュニケ―ションできないとか。 また車の中でされた会話はわかるけど、 それ以外の会話はわからないことで、読者に対する情報提供を絶妙にフィルタリングする役目もあります。 その一方で、人間が知り得ない情報を、他の車からもたらされていたりして。

文庫版は、表紙の裏に書き下ろしの掌編「ガソリンスタンド」も載っているので、お忘れなく。

(2016.04.09)


カンナ 鎌倉の血陣/高田崇史 (講談社文庫)

★★★  

カンナシリーズ第6弾。頼朝暗殺を初めとする、血塗られた源氏の最期に迫る。

QEDシリーズとカンナシリーズの大きな違いは、探偵役が傍観者か当事者か、といったところだと思うのですが、 それにしてもカンナシリーズの主人公s達は無防備過ぎ。バキバキフラグ立てまくってるんじゃないよ。

残り3作(既に入手済み)、どんな結末を迎えるのか、楽しみです。

(2016.04.06)


←ひとこと書評・インデックス
←←推理小説の部屋へ
→自己満・読破リスト
→推理小説関連リンク
!新着情報

↑↑趣味の館へ

KTR:ktr@bf7.so-net.ne.jp