推理小説の部屋

ひとこと書評


孤宿の人 (上)(下)/宮部みゆき (新潮文庫)

★★★☆ 

時代物。四国の海を臨む丸海。生まれてすぐに両親に捨てられ、 ろくに教育も受けずに「あほうのほう」と呼ばれてきた少女・ほうは、 この地で医者の啓一郎・琴江兄妹と幸せに暮らしていた。 しかしそんな丸海に、妻と子供2人を乱心の末に惨殺し悪鬼となったという加賀殿が流人としてやってくることになった。 そしてそれは様々な死を運んでくることとなった…。

純真な少女・ほう、女伊達らの引手見習・宇佐の2人がメイン主人公。 章ごとに視点が変わりながら物語が紡がれていきます。 これまでの時代物の中でも輪をかけてハードボイルドというか、 結構容赦なくメイン登場人物が死んで行きますね。

またこの時代の庶民の「悪霊」「鬼」といったものに対する認識。 現代からするととても信じられないものがありますが、 「QED」読んでたりすると、天災や病気などの災いを「鬼」や「悪霊」として畏れ、 奉ることで封じ込めた、というのはよく理解できます。

そんな中、「阿呆の呆」から成長していくほうの様子が、まさに清涼剤というか、 とても心を暖かくさせてくれました。

(2010.03.21)


聖域の殺戮/二階堂黎人 (講談社文庫)

★★★☆ 

本格、それもカーばりの密室にこだわったガチガチの本格ミステリを書く二階堂黎人が挑む、 SFミステリ。

宇宙暦120年(西暦24世紀)、恒星連邦では未知の星や生物と接触した際にしばしば起こる、 不可解な事件を解決するための特別捜査班を結成した。 それが宇宙探索艦「ギガンテス」とその乗組員達である。 ギガンテスは、惑星バルガに上陸した調査団が胴体のみを消滅させられたように消滅し、 ただ一人生物学士だけが密室で撲殺されていた事件の解決に向かった。

講談社文庫では初のシリーズですが、実は前作が徳間文庫から出ているらしいです。 未チェックでした。

登場する宇宙人達がなかなか個性的。特に植物系の菜葉樹(ナハージュ)人は個性的ですね。 自由に動くことはできないが、寿命が長い分気が長く、沈着冷静で、無数の枝をコンピュータと接続することで反応時間無しで制御できる、とか。

こういうSFミステリの場合、その謎の根幹となる超科学設定をいかに読者に納得できる形で提示させられるかが鍵だと思うのですが、 その点では比較的通常科学から類推可能な範囲に収まっていたのではないかと。

そして二階堂黎人はやっぱりSFになっても密室なんだなあ、というあたりのこだわりが面白かったです。

(2010.03.19)


なみだ学習塾をよろしく!/鯨統一郎 (祥伝社文庫)

★★★  

サイコセラピスト探偵・波田煌子(なみだ・きらこ)シリーズ第3弾。 警視庁特捜班を辞めた波田煌子は、同じ苗字(だと思い込んだ)学習塾の事務員となる。 高校受験を控えた中学生達は様々な悩みを抱えていて…。

今回は涙を流すのは煌子ではなく、熱血塾長の信人。 「特捜班」と続けて読んだからより強く感じたのですが、 やはり波田煌子のキャラと猟奇殺人は合わないですね。 こういう「日常の謎」系のほのぼのミステリの方が合ってます (それを「特捜班」のラストで煌子自身が言ってたのが、またギャグになっているわけですが)。

次の4作目が「なみだ」シリーズのラストで、これまでの連作短編ではなく、 長編となるようです。

(2010.03.18)


なみだ特捜班におまかせ!/鯨統一郎 (祥伝社文庫)

★★★  

サイコセラピスト探偵・波田煌子(なみだ・きらこ)シリーズ第2弾。 メンタルクリニック「なみだ研究所」を辞めた波田煌子は、 迷宮入りとなった猟奇殺人事件を捜査する特捜班の民間プロファイラーとなって、 7つの迷宮入り事件に挑む。

特捜班のメンバーは、語り手で気弱で運動はからっきしの花山、 ダイナマイトボディの前泊ナナ、引退直前の主任・久保、 エリート警視の高島。 基本煌子の意味不明な発言(ボケ)に対して、花山がツッコみ、高島がイライラする。 しかしいつの間にか煌子の言った通りに犯人像が絞り込まれている、というパターンです。 まあ漫才風のツッコミはもはや鯨先生のお家芸という感じですが。

ところで、被害者が女性の場合は左目から、男性の場合は右目から涙が流れるようですが、 これってそういう法則なんでしょうか?

(2010.03.17)


QED 河童伝説/高田崇史 (講談社文庫)

★★★  

QEDシリーズ。「QED 〜ventus〜 御霊将門」の続編。

福島県相馬市へ相馬野馬追祭を見物するために向かった奈々達一行。 一方、河童伝説が残る川で、左手首が切断された死体が、 続いて左腕が切り落とされた死体が浮かんだ。その二人は奈々達にも関わりのある人物だった…。

「ventus」は次の本編へのプレリュードなんですね。 しかし神山禮子の巻き込まれっぷりは、奈々とはまた違った意味で凄まじいですね。 彼女が幸せになる日は来るんでしょうか。毒草師・御名形史紋が鍵を握ってるのかな?

次は九州のようですが。

(2010.03.16)


紙魚家崩壊 九つの謎/北村薫 (講談社文庫)

★★★  

北村薫さんのノンセクション短編集。8編の短編(ショートショートと呼んでも良いくらいの超短編を含む)と、 中編「新釈おとぎばなし」の9編を収録。

冒頭の1篇「溶けていく」の傾向から、ホラーというか、幻想系短編集かと思ったのですが、 探偵物のパロディあり、ほろりとさせる人情物あり、とバラエティに富んだラインナップでした。

中ではベタながらも「白い朝」(そうか、あれ円紫さんだったのか…)と、 「カチカチ山」における「お婆さん殺人事件」の真相を理詰めで解き明かす「新釈おとぎばなし」が面白かったです。

(2010.03.12)


ありふれた風景画/あさのあつこ (文春文庫)

★★★  

「ガールズ・ブルー」に続く女子高生シリーズ第2弾。

「ウリをやってる」と噂され、人と深く関わることを避けてきた瑠璃は、 「呪いが使える」と噂される不思議な力を持つ上級生・周子に出逢った。 不器用で周りから浮いていた二人は惹かれあっていく…。

あさのあつこさんの書く青春小説に共通する感想ですが、 剥き出しの痛さを感じますね。章によって一人称の視点が変わるので、 瑠璃の側から見て飄々としてマイペースに見えていた周子が、 実は周子なりの過去や悩みを抱えていることがわかるとか。 短いながらもよくできていました。

(2010.03.12)


浦島太郎の真相 恐ろしい八つの昔話/鯨統一郎 (光文社文庫)

★★★  

「九つの殺人メルヘン」の続編。 今度は日本の昔話と現実の事件とを重ね合わせます。

しかし本作においては、現実の事件の真相を探る部分はかなりどうでも良い扱いで、 むしろQEDばりの「昔話」に隠された真相の解釈部分と、 冒頭の厄年トリオによる「昔話」がメインかも。

冒頭の「昔話」は、アニメ、映画、スポーツ、時代劇、ドラマ、お笑い、フォークソング、ラジオ、 と多岐に渡ります。惜しむらくは私よりちょっと上の年代なんで、 もう少し新しかったらもっと楽しめたと思うんですけどね。

(2010.03.12)


使命と魂のリミット/東野圭吾 (角川文庫)

★★★★ 

心臓血管外科の権威・西園教授の下に研修に来ている氷室夕紀。 彼女の父は、西園の執刀した手術によって帰らぬ人となった。 果たしてあの死は意図的だったのか? そんな折、帝都大学病院に脅迫状が送りつけられてきた…。

医療モノでありながら、犯罪サスペンスでもあるという意欲的な作品。 手術の描写も「バチスタ」並に微に細に入ってますし、 東野さんらしい理系トリックも使った仕掛けも満載。

(2010.03.09)


ロマンティック時間SF傑作選 時の娘/中村融編 (創元推理文庫)

★★★  

タイムトラベルSF+恋愛物、という短編を集めた短編集。 はい、はっきり言って好みです。

しかし翻訳物ってのはやっぱりいまいち没頭度が浅いですね。 なんというか、一枚ヴェールに覆われているかのような感じ。

(2010.03.07)


シアター!/有川浩 (メディアワークス文庫)

★★★☆ 

メディアワークス文庫創刊、に合わせた書き下ろし作品。

役者馬鹿で全く生活能力の無かった男を父に持つ春川司・巧の兄弟。 兄の司は、あのような男にはなるまいと堅い職業に付き、 一方弟の巧は、いじめられっ子だった自分を救い出してくれた演劇にのめりこんでいった。 そんな巧が主宰する小劇団「シアターフラッグ」は、一般人にもわかりやすい演劇で人気を集めていたが、 負債額300万円による解散の危機を迎えていた。 巧に泣きつかれた兄・司が貸した条件は、「300万円を貸す代わりに、2年間で劇団の収益のみから300万円を返せ。 出来ない場合は劇団を潰せ」というものだった…。

キャラが(極端と言えば極端ですが)立っていて、とても読みやすい青春小説。 地の文の「視点」が次々と変わるのに最初はちょっと戸惑いましたが。 本当は弟大好きの兄と、天然母性本能くすぐり系キャラの弟をはじめ、 「大人のラノベ」ならではの判りやすい三角…いやn角関係も健在。

しかし最後の収支がいまいち納得できなかったんですが、一日分の収入ってそんなに大きいんですか?? だとすれば、年2回の講演を3回に増やすまでもなく、1回の講演1週間伸ばすだけでも大分変わってきそうな気もするんですが。 それともあれは、払い戻しが大きかったから、ってことなのかなあ?

(2010.03.05)


楽園(上)(下)/宮部みゆき (文春文庫)

★★★☆ 

「模倣犯」のルポライター・前畑滋子。「ピース」の事件を告発した彼女だったが、 事件そのものの毒にやられ、何も書けなくなっていた。 9年が過ぎ、ようやくフリーペーパーの編集者として細々と仕事を再開した彼女の元へ、 中年女性から奇妙な依頼が舞い込む。 12歳で死んだ息子が超能力を持っていたのかどうかを調べてほしい、というのだ。 その依頼はすなわち、16年前の両親による少女殺人事件の真相を暴くことに繋がるのであった。

「模倣犯」の続編、ですが、出版社は違うんですね(あちらは新潮文庫)。 「ピース」事件の爪痕がまだ残る前畑滋子の復活の物語でもあります。 「模倣犯」と同じくリアル路線かと思っていると「超能力」があっさりと出てきてしまうのに少し戸惑いましたが、 そこさえ受け入れてしまえば巧みな構成にグイグイと引き込まれました。 最後の対決が少し肩透かしだったような感じも受けましたが。

(2010.03.02)


ZOKUDAM/森博嗣 (光文社文庫)

★★★  

ZOKUの続編。 いつのまにか「Zシリーズ」というシリーズ名称までついていたようで。 正義と悪が入れ替わったようで、正義側のロボット担当が《ZOKUDAM》、 悪側の怪獣担当が《TAIGON》になったようです。

人が乗って操縦する人型ロボットを実際に動かすにはどのようなメカニズムが必要か、 という森先生なりのシミュレーションにもなっているようです。

このシリーズ、何と言ってもロミ・品川が主役ですね。 悟りきってロボット操縦に喜びを見出して精悍になっていく様子なんか涙が出てきます。

続編は「ZOKURANGER」ということなので、戦隊物になるんでしょうか。 だとするとロミ・品川はピンクというよりは女幹部の方が似合いそうですが。

(2010.02.20)


サクリファイス/近藤史恵 (新潮文庫)

★★★★ 

高校まで陸上選手だった白石誓(チカ)は自分のために走ることが苦痛でしかなかった。 そんな時、他人を勝たせるために走る「アシスト」がある自転車ロードレースに魅せられる。 大学から自転車に転向しプロチームに所属し頭角を現し始めるチカ。 だがそのチームのエース石尾には、かつて出てきた新人をわざと怪我させ再起不能に追い込んだという黒い噂があった…。

自転車ロードレースを舞台にした青春小説。スポーツエンタテインメントとしても、 青春小説としても十分読めますが、そこは近藤さん、ちゃんとミステリとしても成立しています。 過去の現在、2つの事故に秘められた秘密とは? 綿密な伏線にどんでん返しあり。 真相と題名「サクリファイス」の本当の意味がわかった時の感動と言ったら。

単発で十分完結してますが、外伝やら続編もあるようですね。楽しみです。

(2010.02.19)


新本格もどき/霧舎巧 (光文社文庫)

★★★☆ 

新本格のパスティシュ・短編になっていながら、全体としても連作短編となっているという、 霧舎巧さんらしい技巧と新本格への愛に溢れた一作。

収録作品は、タイトルを見れば誰のパロディか一目でわかる作品ばかり。

表題作だけでなく、他の作品からの引用やパロディも豊富に盛り込まれており、 オリジナル作家の作品を深く知っていればいるほど楽しめる、という仕掛け。 そして、これだけの制約の多い作品の中、しかも連載中に、 ちゃんと伏線を張っておいて、ちゃんと連作短編としてのオチもつけるあたりは、 さすがに霧舎先生ですね。続編の「新・新本格もどき」も楽しみにしてます。

(2010.02.13)


塩の街/有川浩 (角川文庫)

★★★☆ 

有川浩のデビュー作にして、電撃文庫版の後「自衛隊三部作」として単行本化。 この度「空の中」「海の底」に続いてようやく最後に文庫化された完全版です。

本編の基本的な流れは同じ。フォントの大きさや漢字の使い方の違い、イラストが少ないからか、 電撃文庫版とはまた違った印象を受けますが、 文章も手が加えられているんでしょうか?

そして「その後」として収録された4編のスピンオフ番外編。 ルポライター志望の中坊目線で二人のラブラブっぷりを描いた「旅のはじまり」、 立川で真奈の世話を焼いてくれた女性自衛官が結婚を決意するまでを描いた「世界が変わる前と後」、 孤高の天才科学者・入江がお嬢さまに拉致監禁される「浅き夢みし」、 そして秋庭の父親に挨拶しに行く完結編「旅の終わり」。 どれも本編を補強して、ジュブナイル版では物足りなかった読後の満足感を補ってくれる作品になってました。

(2010.02.11)


密室殺人ゲーム 王手飛車取り/歌野晶午 (講談社文庫)

★★★☆ 

ビデオチャットルームに現れた5人。互いをハンドルで呼び合い、 変装をして声も変えているため、正体はわからない。 彼らが興じているのは「リアル探偵ごっこ」。 1人が出題者となり、実際に起こした殺人のデータを元に、残りの4人が謎を解き明かす。 もちろん犯人=出題者なので、犯人当てにはならず、ミッシングリンクだったり、 密室だったり、アリバイ崩しだったり…。 しかしやがてありきたりの問題に物足りなくなったある出題者は…。

中で取り上げられているトリックネタは、それぞれが十分に短編としては通用するようなボリュームでありながら、 でもやっぱりわざわざそんなことする奴いねーよ、というツッコミを入れざるを得ないようなネタなので、 こういう「動機なき、殺人のための殺人」というシチュエーションが一番ハマるのかも知れませんね。

でも一番びっくりしたのは最後の「To Be Continued...」だったり。 「密室殺人ゲーム 2.0」が既にノベルスで出てるそうですが、3部作だったんですね。 しかしお互いに正体を明かしてしまって、これ以上話が続くのか…?

(2010.02.07)


乱鴉の島/有栖川有栖 (新潮文庫)

★★★☆ 

火村と有栖シリーズ、非国名シリーズでは久しぶりの長編。 休暇を求めて「命の洗濯」に出た火村&有栖が、絶海の孤島に迷い込んでしまう、 という火村シリーズでは珍しい「巻き込まれ」型シチュエーション。 何か秘密を共有しているらしい島の住人達に対して、 完全に「部外者」となる火村と有栖は、果たして真相に辿り着けるのか?

孤島、クローン技術の権威、高名な老詩人、そしてベンチャーの旗手、 と一見ミスマッチなパーツが織り成すプロット。 しかしそこで繰り広げられる火村の推理は、どこまでもオーソドックスで、 本格の醍醐味を味わえます。第7章で語られる解決編はまさに圧巻。 まるで周りを塗り潰して白地で正解の絵を浮かび上がらせるように、 精緻な論理で追い詰めていきます。

新本格の人たちで、いまだにちゃんとした本格をそれなりの頻度で定期的に書いてくれてるのって、 有栖川さんくらいですよね。貴重な存在です。

(2010.02.02)


徳利長屋の怪 名探偵夢水清志朗事件ノート外伝/はやみねかおる (講談社文庫)

★★★  

ギヤマン壺の謎に続く、 番外編の江戸編・後編。

なんと勝海舟と西郷隆盛の会談の影にも名探偵が…。 そんな感じで綺麗にまとまった番外編でした。 どうやら他のシリーズとのクロスオーバーも色々仕込んでいるようで。

(2010.01.26)


ダブルダウン勘繰郎・トリプルプレイ助悪郎/西尾維新 (講談社文庫)

★★★  

清涼院流水のJDCこと「日本探偵倶楽部」へのトリビュート二部作を収録。

清涼院流水の「カーニバル」などは読んだことありませんが、 「探偵」ではなくいわゆる「名探偵」がたくさん所属している組織、くらいの認識で問題なし。

そして中身は完全に西尾維新作品。名探偵になりたい勘繰郎とかつて名探偵だった逆島あやめとの対決。 1つの盗みに対して3人の殺人を犯す「三重殺(トリプルプレイ)の案山子(スケアクロウ)」。 叙述トリックも仕掛けられていて、ちゃんとそれっぽい仕上がりになってました。

(2010.01.26)


ソフトタッチ・オペレーション 神麻嗣子の超能力事件簿/西澤保彦 (講談社文庫)

★★★☆ 

〈超能力者問題秘密対策委員会〉略してチョーモンインシリーズの最新作。 4作の短編と、中編の表題作「ソフトタッチ・オペレーション」を収録。

能解警部が出てこない…。最後の中編も、超能力者の一人称で語られますが、 その超能力はほとんど何の役にも立たないし、神麻さんは声だけの出演だし、 そういう意味ではかなりの異色作かも知れません。 マザコンで脚フェチという性格設定も凄いなあ。

(2010.01.17)


イノセント・ゲリラの祝祭(上)(下)/海堂尊 (宝島社文庫)

★★★  

「愚痴外来」の万年講師・田口公平が、高階病院長から受けた依頼は、 「ロジカル・モンスター」白鳥からの招待状と、厚生労働省で行われる会議への出席要請だった。

「チーム・バチスタ」が医療事故とAi、「ナイチンゲール」が小児科、 「螺鈿迷宮」が終末医療、「ジェネラル・ルージュ」が救急医療、をそれぞれ取り上げていましたが、 今回のテーマは「解剖・検死」と「司法と医療の分離」。 これまでのはかろうじて、死者が出たりしてミステリとしての体をなしていましたが、 今回は純粋に医療問題を提起するための作品。 解剖率2%台、監察医制度は6都市に限定されているとか、 知らないことが多くて、勉強になりました。

一方、バックで「北」の問題が進行しているようで、姫宮が潜入調査を開始しているようです。 これが「極北クレイマー」に繋がるようですね。

今回は顔見せだけだったパペット使い・桧山シオンもきっと今後の作品で出てくるんでしょうね。

(2010.01.10)


吉原手引草/松井今朝子 (幻冬舎文庫)

★★★☆ 

十年に一度の花魁といわれた葛城。しかしその全盛の時、吉原から忽然と姿を消した。 果たして何が起こったのか?第137回直木賞受賞作。

吉原の関係者に対する聴き取り、という形で構成された時代ミステリ。 最初は何が起こったのかすら読者にはよくわからないのですが、 様々な証言から、葛城の人となりから、事件の概要が浮かび上がってきます。 また、同時に吉原のシステムそのものの入門としても機能しているところが面白いですね。

さまざまな伏線が最後にあざやかに収束する様はまさにミステリの醍醐味でした。

(2010.01.08)


←ひとこと書評・インデックス
←←推理小説の部屋へ
→自己満・読破リスト
→推理小説関連リンク
!新着情報

↑↑趣味の館へ

KTR:ktr@bf7.so-net.ne.jp