推理小説の部屋

ひとこと書評


あの頃のぼくらはアホでした/東野圭吾 (集英社文庫)

★★★☆ 

東野圭吾さんの自伝的エッセイ集。 やっぱ大阪の人ですね。面白いっス。 それにしても凄まじい中学校だなあ。

できれば、会社に入ってから小説家になるまでの話も読んでみたいなあ。

(1999.03.28)


犯罪カレンダー《1月〜6月》/エラリー・クイーン (ハヤカワ・ポケットミステリ)

★★★  

文庫で出てるエラリー・クイーンはほとんど読み尽くしてしまった私。 久しぶりに読んだクイーンです。 毎月のイベントをテーマにした短編集。 「エラリークイーンの事件簿」以来のニッキー・ポーターもいっぱい出てきて、 ファンには嬉しい一冊ですね。

内容は相変わらずクイーンらしい、容疑者を2〜3人に絞った上で、 最後の手掛かりを手にしたクイーンが指摘する、と言ったパターンが多いです。 ただ、ダイイングメッセージもの(の変形)では、 「日本人にわかるか〜」というようなものもあるのも、またご愛敬。

1月〜6月編で一番好きなのは「4月 皇帝のダイス」かなあ。

(1999.03.26)


七十五羽の烏/都筑道夫 (光文社文庫)

★★☆  

なんか、本格ミステリの古典的名作、らしいです。絶版になっていたのを復刻。 各節の頭に「解説(?)」がついてるのが変わってます。

ただ、正直文体が古めかしいからか、登場人物の名前が古めかしいからか、 なんか読んでてあんまり頭に入ってこなかったんですよね。 特に登場人物の名前は、中盤になってリストが出てくるまでは誰が誰やら、 さっぱり覚えられませんでした。 やっぱ登場人物一覧は最初に欲しいですね。

話もほとんど流し読みというか、あんまりまともに考える気が起きませんでした。 結末も「ふーん」ってな感じだし…。

正直言って、期待外れでした。まあ、ロジカルであることは認めますけど。

(1999.03.26)


プレゼント/若竹七海 (中公文庫)

★★★  

若竹七海の短編集。主人公、というか探偵役が2人います。 職を転々としてる葉村晶と、警部補の小林舜太郎。 この2人の話が交互に配置されてます。 葉村編は晶の一人称、小林編は犯人の一人称+三人称で語られる、 という形が基本のようです。

若竹七海と言えば、やはりデビュー作「僕のミステリな日常」。 短編集の形式を取っていながら、 各話が有機的に結びついて全体で一つの謎と答えを作り出す、 という構成が見事でした。 この手法は西澤保彦の「解体諸因」などにも引き継がれてます。

で、今回の話もそういうオチがあるのかなあ、とちょっと期待してしまったんですが、 最後の話で二人が絡む、という以上の仕掛けはないようですね (私が気づいてないだけかも知れませんが)。 ちょっとそこが物足りなかったです。 小林編の「殺人工作」の中で、マンションにいる男女が「葉村」という女のことを 話し合ってる、などという「ニアミス」はあるようですが。

各話は、皮肉が利いててなかなか面白かったです。 好きな話は「冬物語」「殺人工作」あたりです。

(1999.03.21)


冷たい密室と博士たち/森博嗣 (講談社文庫)

★★★☆ 

なんとか4日で読めた。久々にいいペース。なんとか復活できるか?

森作品2作目。うーん、今後このペースで刊行されてくれるととっても楽しみ。 やっぱ作家はコンスタントに作品出さなきゃ駄目だよね(笑)。

密室ものだとどうして密室にしたのか、 という点が大事になりますが、 この作品では十分に納得の行く理由付けがなされてます。 んでもって解決編。 解決を見るとすごく論理的でこれ以外ない、って気になりますね。 やっぱ紛れもない本格だわ。

まあ、インパクトという点ではやはり「F」にはちょっと劣りますかね。

しかし途中で散々出てくるワークステーションとかメールとかtelnetとかの場面、 私はもちろん大学で使ってましたからよーくわかりますけど、 普通の人がああいう場面の記述を見て理解できるものなのかなあ、 というのが結構疑問。いや、別にあんまり理解する必要もないような気はしますが。

(1999.03.16)


鮎川哲也・短編傑作選I 五つの時計/鮎川哲也・北村薫 編 (創元推理文庫)

★★★  

読了するまで10日もかかってるし。うーん、最近読むペースがすっかり落ちてるなあ。

というわけで、ようやく読み終えました。 あんまり鮎川さんの作品を知らなかった私にとっては、 こういう企画はありがたいですね。

こうしてまとめて読むとアリバイもの・鉄道トリックものが多いですね、 やっぱり。 でも個人的には 「××と同じような条件を満たす地点を使って場所を錯誤させる」 といった類のトリックは、 「ふーん、そういう場所があるんだ」程度の感想しか抱けませんね。

密室ものとか、アリバイ捜しとか、 なかなかバラエティに富んでて面白かったです。 やっぱり最初の「五つの時計」が面白かったかな。 あと「不完全犯罪」とか。

(1999.03.14)


毒笑小説/東野圭吾 (集英社文庫)

★★★☆ 

「怪笑小説」に続く東野圭吾さんのユーモア…もとい、お笑い小説短編集。 相変わらずブラックな笑いが満載です。 ただ、「怪笑小説」の「超たぬき理論」のような、ズバ抜けた怪作がなかったかな、 という印象ですね。 中では「エンジェル」「つぐない」が面白かったです。

前作は巻末に作者自ら一作ずつに解説がついていて妙にお得な感じがしましたが、 今作はそれがなかったのでちょっと残念。 まあ、京極夏彦さんとの対談も面白かったですが。

(1999.03.03)


ミステリーアンソロジー不透明な殺人/有栖川有栖・鯨統一郎・姉小路祐・吉田直樹・若竹七海・法月綸太郎・永井するみ・柄刀一・近藤史恵・麻耶雄嵩 (祥伝社ノン・ポシェット)

★★★  

「不条理な殺人」に続く祥伝社のミステリーアンソロジー。 ノリリンの新作が読めるのは貴重かも。 しかしもう探偵・法月綸太郎モノは書かないのかなあ…。

若手中心でバラエティに富んだ内容ですね。 「邪馬台国はどこですか?」でいきなりデビューした鯨統一郎など、 なかなか見逃せない内容です。

個人的な好みでは、やはり有栖川有栖さんの「女彫刻家の首」と、 姉小路祐さんの「複雑な遺贈」が面白かったです。 吉田直樹さんの「スノウ・バレンタイン」も、 プロットだけでアリ(笑)。

(1999.02.28)


死のある風景/鮎川哲也 (ハルキ文庫)

★★☆  

鮎川作品を読むのはこれで2作目。 鉄道アリバイミステリって実は初めて。 「名探偵の掟」でも言ってたけど、あんな時刻表、 普通やっぱり読まないよなあ。

というわけで、非常にオーソドックスな作りの推理小説でした。 最初、バラバラに事件が起こり、しかもその場所がまちまちなので (まあ、ここまではよくあるんですけど)、 その度にちがう警察署が出てきて(いや、全くもってリアルなんですが)、 そこの刑事が調査をするんで、 なんというか刑事たちのキャラが全然頭に入りませんでした。

中盤以降、ようやく被害者や登場人物たちの間の関係が明らかになり始めると、 ようやく面白くなってきますが、最後がかなりあっけなかったですね。

(1999.02.23)


私が彼を殺した/東野圭吾 (講談社ノベルス)

★★★★☆

話題作「どちらかが彼女を殺した」の続編(?)にあたる作品で、 例によって「解決編」がありません。 「どちらかが…」では2人の容疑者のどちらが犯人か?でしたが、 今回の容疑者は3人。

相変わらず構成がうまいですね。 しかしよくもここまで「殺されて当然」と思えるようなキャラクターを作れるなあ。 あと、前回の続編とは知りつつも、実は加賀刑事が出てくるとは思っていなかったので、 出てきた時にはとても嬉しかったです。やっぱりシリーズキャラクターって、 感情移入度が違いますね。

さて、肝心の犯人なんですが…。 まだわかりません(^^;)。 とりあえず、現在までの推理をこちらに載せましたが…(ネタバレ要注意!!)。 でも、今の世の中、いざとなればインターネットでいろんな推理を見ることができて、 いい時代ですよね。こういう交流の場がない状態だと、 たとえ自分で推理したとしても、 それが合ってるのかどうなのか悶々とした日々を過ごしそうですしね。

(1999.02.14)


えーと、考えに考えて、ようやく「答え」らしきものを得ました。 もっともこれが当たっている保証もないんですけど。 というわけで、「推理完成!」へどうぞ (当然のことながらネタバレですので注意)。

(1999.02.16)

さらに、「さらに検討」を追加しました

(1999.02.20)


ROMMY 越境者の夢/歌野昭午 (講談社文庫)

★★★★ 

歌野昭午2冊目。デビュー作の「長い家の殺人」があんまり面白くなかったんで、 それ以来敬遠していたんですが、一度断筆してからまた書いたという評判の「ROMMY」を、 昨年文庫化された際に買っておきました。それからずーっとほっておいたんですけど。

で、読んでみました。いやあ、面白かったです。 歌野さんて音楽にすごい造詣の深い方だとは聞いていたんですが、 音楽業界のことが非常にそれっぽく書いてありますね。 ミステリとしても、替え玉、空かないはずの扉の謎、 死体切断の理由は?、そして最大の謎、と非常に盛りだくさんで、 でもって真相はどこか切なくて、とても楽しめました。

(1999.02.05)


自殺の殺人/エリザベス・フェラーズ

★★★☆ 

自殺か?他殺か?自殺に見せかけた他殺か?他殺に見せかけた自殺か? はたまた…。 「猿来たりなば」につづいてトビーと ジョージが探偵役として登場するシリーズもの。 二転三転する推理がポイントですね。なかなか面白かったです。

前作に比べるとトビーとジョージの力関係が変わったのかな?と思いきや… この2人の関係もこのシリーズの特徴ですね。

(1999.01.30)


痾/麻耶雄嵩 (講談社文庫)

★★☆  

「夏と冬の奏鳴曲」でかなり懲りたんですけど(^^;)、 懲りずに続編を読んでみました。 少しでも前回の話に対する解決があれば、とちょっと期待してたんですが、 それは見事に裏切られましたね。烏有君はいきなり記憶障害起こしてるし。 “桐璃”はいつまでも“桐璃”だし。

メインの話自体はよくわかったんですが、 相変わらず挿入されるエピソードがよくわからないものが多い。 今回の最後で藤岡が語っていたトラウマって、 前作で烏有が言っていたことそのままですよね? 一体どういうことなんだろう…。

今更かもしれませんけど、登場人物の名前が変過ぎ。 「わぴ子」はないだろう、「わぴ子」は…(なんか元ネタあるらしいけど)。 もう慣れましたけどね。

それにしても、烏有君のダメダメぶりが…。

(1999.01.23)


猿来たりなば/エリザベス・フェラーズ (創元推理文庫)

★★★☆ 

いやあ、読み易かった。その前に分厚いノベルスを読んでたせいもありますけど、 薄くて読み易かったです。 海外物なのに、文章が入っていき易いのも読み易い要因でしょうね。

しかしこれが50年以上前の作品とは思えないですね。 一番感心したのは「猿を殺した動機」ですね、やっぱり。

さっそく、続編らしい「自殺の殺人」も買ってきました。 その内読むつもり。

(1999.01.15)


人狼城の恐怖 《第4部・完結編》/二階堂黎人 (講談社ノベルス)

★★★★ 

ようやく終わりました。長かった…。 この完結編はほとんど全編推理と解決のために費やされてます。 蘭子シリーズお約束の、最後の活劇シーンもあって、サービス満点ですね。

解決編に迫力を感じたミステリというと、綾辻行人の「時計館の殺人」を思い浮かべますが、 この作品はそれよりも長いですね。丸ごと一冊(第3部から続いてるので2冊分か)ですから。 「時計館の殺人」が畳み込むような迫力だったのに比べると、 こちらの「人狼城の恐怖」の場合は、まず個々の密室殺人について、 一つ一つ解き明かしていく、という緩やかな構成を取っています。 そして中盤辺りからその勢いは加速し、中核となる《人狼城》の真相へ、 となだれ込む、という感じですね。ここら辺の緩急の付け方がうまいなあ、と思いました。

その《人狼城》の真相ですが、さすがにあれだけ引っ張ってくれると、 私にも読めました。まあ面白かったですけど。

最後に付けられたエピローグ部分が、まるでカーの「火刑法廷」のような雰囲気を醸し出してますね。

(1999.01.15)


人狼城の恐怖 《第3部・探偵編》/二階堂黎人 (講談社ノベルス)

★★★★ (未確定)

いよいよ解決編に突入。 推理小説でああでもないこうでもないって試行錯誤する場合、 その「間違った推理」の魅力というのもひとつのポイントですよね。 助手役の二階堂黎人はいつも間違った推理をして蘭子の失笑を買ってますが (でもそれをヒントにして正しい推理を思いついたりするんですが)、 この第3部で見せる「仮説」はなかなか魅力的です。 というか、それ以外ないだろ、と思わせる説得力を持ってます。

第2部は日記という体裁を取っていたので、 それを手に入れるんだろうなあ、とは思ってましたが、 第1部は一体どうするんだろう? と思ったんですが、なるほどそういうことですか。

さて、いよいよ完結編。完結編を手に入れるのにやたらと苦労しましたが、 楽しみにしたいと思います。

(1999.01.10)


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