★★★★
「星」や「宇宙」をテーマにした短編を集めた連作短編集。
第1話「南の十字に会いに行く」。父娘で石垣島へ。しかし昨年までいたはずの母親がいない……。 離婚したのか?死別したのか?と思いきや、意外なオチが待っています。
そして色々とテイストの異なる短編が含まれているのですが(中には「金未来SF?」みたいなのも)、 最終話で驚きの仕掛けが!これぞ加納さんの連作短編ですよね!
(2025.06.10)
★★★
関東のどこかにある犯罪発生率が異常に高い街・烏賊川市(いかがわし)を舞台とした、 私立探偵・鵜飼とその弟子戸村を探偵役にした「烏賊川市」シリーズの第8弾。 シリーズ3作目の短編集。
倒叙モノが3編入ってます。ロボットだったりゆるキャラだったり、 相変わらず緩い感じでいいですね。
(2025.06.02)
★★★
竹林をこよなく愛す作家・森見登美彦が、古典を現代語訳。
「竹取物語」は、子供の頃絵本や童話として読んだきりで、 古典としてちゃんとは読んでない気が(古文苦手だったし)。
ところどころ「森見節」とでも言えるような表現も散りばめつつ、 読みやすくわかりやすかったです。
(2025.05.20)
★★★★☆
賞金1000万円を掛けたクイズ番組「Q-1グランプリ」の決勝。 6-6で並んで次の問題を取った方が勝者、という状況で、 出題者が「問題……」と言った時、本庄絆は早押しボタンを押した。 まだ一文字も発せられていないその問題に、しかし本庄絆は「ママ、クリーニング小野寺よ」と解答する。 判定は正解。優勝は本庄絆のものとなった。
決勝で敗れた三島玲央は、この不可解な「ゼロ文字正答」の謎を解明すべく、 過去の本庄絆の出演した番組の録画を取り寄せる。 果たしてイカサマだったのか、それとも正答できる何かがあったのか?
冒頭の謎が魅力的ですし、それを解明していく過程において、クイズの作問/解答のテクニックが解説されたり、 「Q-1グランプリ」の決勝を振り返りながら主人公・三島の生い立ちや人生のイベントを知ることができたり、 と無駄のない構成で最後まで読ませます。
正直、後味はちょっと……というところもありましたが、面白かったです。
(2025.05.20)
★★★
最速の忘却探偵、掟上今日子さんが誘拐された。 置手紙事務所の警備員・親切守の元に届いた身代金の金額は10億円。 一介の警備員に集められるはずもない金額を要求してきた犯人の真の目的は何なのか?
謎は大きく2つ。犯人の目的は何か?そして、今日子さんはどうやって押切に自分の居場所を伝えて救出してもらうのか?
まさに一度しか使えない色見本トリックでした。
(2025.05.20)
★★★
2017年の作品「化石少女」の続編。
私立ペルム学園の古生物学部には、 3年生で部長の神舞まりあと2年生でまりあのお目付け役の桑島彰の2人だけ。 しかし1年生の高萩双葉が入部してきたことで、ぬるま湯のような古生物学部にも緊張感が……。
まりあが探偵役として、真相を突き止めそうになると、彰がニセの手掛かりを与えて別の方向へ誘導し、 真相にはたどり着けないようにする、というのがこの作品のフォーマットでした。 今回、さらに1年生の高萩が加わって、彰と綱引きを始めたことで、さらにまりあの動きが予測不能なものに。
それにしても、学生にも教師にも、殺人者が多過ぎ!治安が悪すぎるでしょ、ペルム学園。
(2025.05.20)
★★★
SF新本格の第一人者が送る特殊設定ミステリ。 叔母と甥の関係にある刻子と素央には、二人でシンクロして未来を見る予知夢の能力があった。 親族が揃った別荘で、刻子以外のすべてのメンバが殺されるという予知夢を見た。 確定の未来を変更するために、素央は別荘に行かないことにし、未来は変わった。 予知夢の答え合わせをする二人。しかし未来はまだ確定していなかった……。
「予知夢」自体は比較的オーソドックスな能力ですが、二人でシンクロして見たり、 入れ子構造になっていたり、とひねりが加えられています。
真相は面白かったんですが、登場人物の心理に共感できないんですよね……。
(2025.03.24)
★★★★★
高校生の射守矢真兎が挑む5つの勝負は、「地雷グリコ」「坊主衰弱」「自由律ジャンケン」「だるまさんがかぞえた」「フォールーム・ポーカー」。 騙し合いは勝負の前から始まっている。
文庫落ちを待つつもりだったのですが、3つも賞を受賞して、コミカライズまでされてしまったので、 文庫までネタバレ踏まずにやり過ごせる自信がなく、単行本買ってしまいました。
面白かったです!良く知っているゲームに少しルールが追加されたアレンジゲームで対決する作品。 ゲームのルール内での攻略法もあるんですが、盤外というか、ルールを外れたところにある仕掛けをいかに相手に押し付けるか、 というところが見所ですね。
(2025.03.24)
★★★
「犯人当て」短編を集めたアンソロジー。元の小説にはなかったと思うのですが、 すべての手掛かりが揃った時点で「読者への挑戦」が挿入されています。
多分他にも読んだことある作品あったと思うのですが、覚えていたのは米澤穂信さんの「伯林揚げパンの謎」だけでした。 これはアニメで観たからさすがに覚えてました。
(2025.03.24)
★★★☆
大阪の商人文化の中心地船場で、化粧品販売により富を築いた「大鞠百薬館」。 戦下で化粧品が贅沢品とされ、商売が縮小する中、大鞠家の長男・多一郎に嫁いだ美禰子。 しかし多一郎は出征してしまい、商人文化の残る大鞠家に一人残された美禰子は、 不可解な状況が続く連続殺人事件に遭遇する。
物語は、明治の末期、大鞠家の長男のパノラマ館における不可思議な失踪から始まります。 そして時は流れ、戦時の1943年に。不可解な事件が色々と起こるのですが、全部スルーされ、 謎のまま進みます。次男が推理小説好きということで、彼が探偵役になるのかな? と思いきや、招集されてしまうし、頼りない民間探偵が登場するものの、退場してしまうし、 というわけで、すべてが謎のまま大阪大空襲を迎えてデウス・エクス・マキナ。
戦後パートになって、ようやく探偵役が現れ、すべての謎が解き明かされるところは、 カタルシスですねー。しかし、この作品の構造自体が、ある探偵小説のオマージュのようにも感じました。
(2025.02.22)
★★★☆
有栖川有栖デビュー35周年を記念して、7人の作家がアリス作品をトリビュート。 やはり火村モノが多かったですが、山伏地蔵坊やら、江神モノもあったり、 それぞれ個性が出ていた作品集になってます。
(2025.02.10)
★★★☆
見た目は似ているが、性格は真逆な小梅とつぐみ姉妹。大学進学もせず、実家の和菓子屋で働く小梅に対して、 大学で演劇をやりながら、中東への留学を計画するつぐみ。 そんなつぐみに、ある時「おはよう おかえり」と妙な関西弁を使う年寄りが取り憑いた。 どうやら曾祖母の榊らしいのだが……。
「おはようおかえり」とは、「早く帰っておいで」という、「いってらっしゃい」に相当する挨拶。 明治生まれの曾祖母とのジェネレーションギャップに戸惑いながら、 自分の生き方を見つめ直す姉妹の様子が描かれます。
(2025.02.02)
★★★☆
江神シリーズと火村シリーズの短編が混在し、さらにノンシリーズものを2編収録した珍しい短編集。
江神シリーズは万年供給不足なので、短編でも供給があると嬉しいですね。
(2025.01.23)
★★★★
他人の「飛沫感染」をすると、その人の明日のハイライトを先に見ることができる能力「先行上映」を持つ、 中学教師の壇先生。生徒の父親の未来を「先行上映」して見たことから、とんでもない事態に巻き込まれ……。
悲観的なロシアンブルと楽観的なアメショー、という二人組の「ネコジゴ・ハンター」が、 猫の虐待に加担した人々に復讐していく仕事人みたいなパートが挟まっており、 それはどうやら女生徒の書いた小説(作中作)らしいことがわかります。 そこに「サークル」に所属する成海という女性の視点も加わり、3つのパートが入れ替わり現れるのですが、 途中でその境界がゆらいで……。
「ペッパーズ・ゴースト」というのが舞台用語で、そこにないものをあるように見せる演出のことらしいですが、 読者がまさにその演出に巻き込まれていくような構成ですね。 また、強者同士をぶつけて解決する、という辺りは「グラスホッパー」や「マリアビートル」のような殺し屋大集合みたいなのにも通じるものがありますね。
(2025.01.14)