★★★
SF新本格の第一人者が送る特殊設定ミステリ。 叔母と甥の関係にある刻子と素央には、二人でシンクロして未来を見る予知夢の能力があった。 親族が揃った別荘で、刻子以外のすべてのメンバが殺されるという予知夢を見た。 確定の未来を変更するために、素央は別荘に行かないことにし、未来は変わった。 予知夢の答え合わせをする二人。しかし未来はまだ確定していなかった……。
「予知夢」自体は比較的オーソドックスな能力ですが、二人でシンクロして見たり、 入れ子構造になっていたり、とひねりが加えられています。
真相は面白かったんですが、登場人物の心理に共感できないんですよね……。
(2025.03.24)
★★★★★
高校生の射守矢真兎が挑む5つの勝負は、「地雷グリコ」「坊主衰弱」「自由律ジャンケン」「だるまさんがかぞえた」「フォールーム・ポーカー」。 騙し合いは勝負の前から始まっている。
文庫落ちを待つつもりだったのですが、3つも賞を受賞して、コミカライズまでされてしまったので、 文庫までネタバレ踏まずにやり過ごせる自信がなく、単行本買ってしまいました。
面白かったです!良く知っているゲームに少しルールが追加されたアレンジゲームで対決する作品。 ゲームのルール内での攻略法もあるんですが、盤外というか、ルールを外れたところにある仕掛けをいかに相手に押し付けるか、 というところが見所ですね。
(2025.03.24)
★★★
「犯人当て」短編を集めたアンソロジー。元の小説にはなかったと思うのですが、 すべての手掛かりが揃った時点で「読者への挑戦」が挿入されています。
多分他にも読んだことある作品あったと思うのですが、覚えていたのは米澤穂信さんの「伯林揚げパンの謎」だけでした。 これはアニメで観たからさすがに覚えてました。
(2025.03.24)
★★★☆
大阪の商人文化の中心地船場で、化粧品販売により富を築いた「大鞠百薬館」。 戦下で化粧品が贅沢品とされ、商売が縮小する中、大鞠家の長男・多一郎に嫁いだ美禰子。 しかし多一郎は出征してしまい、商人文化の残る大鞠家に一人残された美禰子は、 不可解な状況が続く連続殺人事件に遭遇する。
物語は、明治の末期、大鞠家の長男のパノラマ館における不可思議な失踪から始まります。 そして時は流れ、戦時の1943年に。不可解な事件が色々と起こるのですが、全部スルーされ、 謎のまま進みます。次男が推理小説好きということで、彼が探偵役になるのかな? と思いきや、招集されてしまうし、頼りない民間探偵が登場するものの、退場してしまうし、 というわけで、すべてが謎のまま大阪大空襲を迎えてデウス・エクス・マキナ。
戦後パートになって、ようやく探偵役が現れ、すべての謎が解き明かされるところは、 カタルシスですねー。しかし、この作品の構造自体が、ある探偵小説のオマージュのようにも感じました。
(2025.02.22)
★★★☆
有栖川有栖デビュー35周年を記念して、7人の作家がアリス作品をトリビュート。 やはり火村モノが多かったですが、山伏地蔵坊やら、江神モノもあったり、 それぞれ個性が出ていた作品集になってます。
(2025.02.10)
★★★☆
見た目は似ているが、性格は真逆な小梅とつぐみ姉妹。大学進学もせず、実家の和菓子屋で働く小梅に対して、 大学で演劇をやりながら、中東への留学を計画するつぐみ。 そんなつぐみに、ある時「おはよう おかえり」と妙な関西弁を使う年寄りが取り憑いた。 どうやら曾祖母の榊らしいのだが……。
「おはようおかえり」とは、「早く帰っておいで」という、「いってらっしゃい」に相当する挨拶。 明治生まれの曾祖母とのジェネレーションギャップに戸惑いながら、 自分の生き方を見つめ直す姉妹の様子が描かれます。
(2025.02.02)
★★★☆
江神シリーズと火村シリーズの短編が混在し、さらにノンシリーズものを2編収録した珍しい短編集。
江神シリーズは万年供給不足なので、短編でも供給があると嬉しいですね。
(2025.01.23)
★★★★
他人の「飛沫感染」をすると、その人の明日のハイライトを先に見ることができる能力「先行上映」を持つ、 中学教師の壇先生。生徒の父親の未来を「先行上映」して見たことから、とんでもない事態に巻き込まれ……。
悲観的なロシアンブルと楽観的なアメショー、という二人組の「ネコジゴ・ハンター」が、 猫の虐待に加担した人々に復讐していく仕事人みたいなパートが挟まっており、 それはどうやら女生徒の書いた小説(作中作)らしいことがわかります。 そこに「サークル」に所属する成海という女性の視点も加わり、3つのパートが入れ替わり現れるのですが、 途中でその境界がゆらいで……。
「ペッパーズ・ゴースト」というのが舞台用語で、そこにないものをあるように見せる演出のことらしいですが、 読者がまさにその演出に巻き込まれていくような構成ですね。 また、強者同士をぶつけて解決する、という辺りは「グラスホッパー」や「マリアビートル」のような殺し屋大集合みたいなのにも通じるものがありますね。
(2025.01.14)