推理小説の部屋

ひとこと書評


さみしさの周波数/乙一 (角川スニーカー文庫)

★★★☆ 

初の単行本「GOTH」が「このミス」で2位になったり、 週刊少年ジャンプに原作の読み切り漫画が載ったり、 と絶好調ブレイク中って感じの乙一先生の新作。 このブレイクぶりは、デビュー作から知っている身としては、嬉しくもあり、 でも単行本はまだ読んでないんで悔しくもあり。

ザ・スニーカーに収録された「未来予報 あした 晴れればいい」「手を握る泥棒の物語」「フィルムの中の少女」 と書き下ろしの「失はれた物語」を収録。 相変わらずのせつないジュブナイル系炸裂ですが、 主人公の鬱屈ぶりには作者の心情がよく投影されているなあ、 と思わせます(実際はどうだか知らんけど)。 4本の中では、作者本人も気に入っているという「手を握る泥棒の物語」がなんとも後味が良くて好みですね。

これで2002年の読了は85冊。2001年からすると大幅にペースダウン。 月平均7冊か。まあ、後半あんまり読めてなかったし仕方ないですね。

(2002.12.31)


ガーデン/近藤史恵 (創元推理文庫)

★★★  

対照的な二人の少女と、一人の探偵。 疾走した少女の捜索を依頼された探偵は、 やがて自分が大きなうねりへ巻き込まれていることを知る。

「ねむりねずみ」の探偵の「エピソード0」的位置づけらしいですが、 正直「ねむりねずみ」がどんなんだか忘れてしまいました。

それにしても重いなあ。

(2002.12.30)


屍鬼(一)/小野不由美 (新潮文庫)

評価保留 

うわ、すごい長いことかかってしまった。途中で他の作品とか読んでたからなあ。 おかげで登場人物名をすっかり忘れてしまいました。 だって多いんだもん。

土葬の習慣のあるひなびた村にひっそりと、しかし確実に忍び寄る「死」の影。 山奥に住んでいた3人の老人に続き、 中学生の女の子までが突然の死を迎えた……。

まだ導入、という感じですが、しかし5巻もあるんだよなあ。 このペースで読んでたら1年かかりそう…。

(2002.12.23)


よもつひらさか/今邑彩 (集英社文庫)

★★★☆ 

今邑彩さんの短編集。どちらかというとホラーっぽいのが多いです。

キレのある短編がそろってますね。最後まで読んでゾゾゾゾッと来るような。 途中でネタがわかってしまうのもいくつかありましたけど。

中でも特に「見知らぬあなた」と「ささやく鏡」が面白かったかな。

(2002.12.16)


囲碁殺人事件/竹本健治 (角川文庫)

★★★☆ 

Amazon.co.jpのマーケットプレースで手に入れました。 「囲碁」「将棋」「トランプ」と続くゲーム3部作の第1弾。

棋幽戦七連戦の第2局、妙手を放ち一気に優勢となった局面で、 「碁の鬼」と呼ばれる槇野九段が、首無し死体となって発見された。 一体誰が?

竹本さんって、アンチミステリとかメタミステリみたいなのばかり書いているような印象があったんですが、 こんなストレートな本格物も書いてたんですね。 詰め碁を使った殺人予告やら、暗号やら、連続殺人やら、 一見冴えないキャラが最終的な探偵役をやるというところまで、 本格ミステリの作法に則っていて、かつ真相はひねってあって楽しめました。 囲碁がわかってるともっと面白いんだろうなあ、と思いました。

しかし囲碁って、ルール自体はシンプルなのに、 色んな例外ルールが存在するのね。知らなかった…。

(2002.12.12)


そして二人だけになった/森博嗣 (新潮文庫)

★★★☆ 

森先生の、初のシリーズ外長編。講談社じゃない、ってのも初めてです。

海峡大橋を支える巨大なコンクリート塊の中に密かに作られた実験施設「バルブ」。 物理学者、技師、建築家など6名が集まり、 「シェルター」を想定とした実験が開始された。 しかし何者かの破壊工作により、 「バルブ」はエマージェンシーモードへと移行し、 外部との連絡はおろか脱出することも不可能となった。 そんな中、一人、また一人と殺されていく。 一体犯人は…?

孤立した空間の中で、次々と殺されていくという趣向、 さらに童謡の要素も加味して、 「そして誰もいなくなった」のパターンをきちんと継承しつつも、 アクロバティックなどんでん返しの連続をくらいました。 いやあ、久しぶりに「騙された」感を味わったなあ。面白かったです。

(2002.12.07)


QED 百人一首の呪/高田崇史 (講談社文庫)

★★☆  

メフィスト賞受賞作。百人一首をめぐるダイイングメッセージと、 百人一首そのものにしかけられた壮大な「謎」とは?

正直、興味ないので、辛かったです…。 趣向自体は面白いと思うんですが、題材に興味が持てないので…。

(2002.12.01)


人形式モナリザ/森博嗣 (講談社文庫)

★★★  

Vシリーズ第2弾。「乙女文楽」の演劇中、衆人環視の中行われた殺人。 人形造りの巨匠が遺した最後の作品「モナリザ」とは一体何か?

相変わらず(衆人環視や密室などの)不可能犯罪にこだわり続けるのはすごいなー。 しかし紅子と、別れた夫・林との関係は複雑ですね。 紅子や紫子・練無はともかくとして、保呂草のキャラクターがどんどん掘り下げられていくんですが、 こんなんで収拾つくんでしょうか。

(2002.11.23)


ホラーアンソロジー 悪夢制御装置/篠田真由美・岡本賢一・瀬川ことび・乙一 (角川スニーカー文庫)

★★★  

「スニーカー・ミステリ倶楽部」の書き下ろしアンソロジーシリーズ。 「ミステリ・アンソロジー」が4つ続いて、今度は「ホラー・アンソロジー」です。 対象年齢もあるんでしょうが、4作品とも「子供」が出てきます。

篠田真由美さんの「ふたり遊び」。 頭が少しおかしい弟との恐怖のごっこ遊びの結末は?

岡本賢一さんの「闇の羽音」。 廃屋に住み着いた闇の住人の正体は?

瀬川ことびさんの「ラベンダー・サマー」。 広い意味でのホラーですが、 軽いコメディタッチの青春ラブコメ(?)としてもよくできてます。

乙一さんの「階段」。相変わらずの強烈なトラウマ系。 怪物やらお化けやら殺人鬼やらが出てこない分、 ある意味こういうのが一番怖いかも。 本人自身が書いてる前書きの明るさと対照的だなあ。

(2002.11.14)


みすてりあるキャラねっと/清涼院流水 (角川スニーカー文庫)

★★★  

ネットワークリアルタイムRPG「キャラねっと」。 13歳〜19歳までのティーンエイジャーだけが参加することのできるこのゲームの中で、 「オレ」の分身である「池丸大王」は「削除」された。 キャラを「削除」したことがバレれば「永久退学」処分が待っている。 一体誰が「オレ」を殺したのか?

ネットゲームの仮想世界の中で起きた「密室殺人」の謎を解く、という趣向。 掲載誌が掲載誌だけにそれなりの年齢向けなんでちょっとアレなところもありますが、 まあそれなりに面白かったです。横書きってのも新鮮。

章が変わる度にあらすじを説明しなおすのが鬱陶しいなあ、と思っていたんですが、 「ザ・スニーカー」に連載されていたからなんですね。納得。

(2002.11.09)


猿若町捕物帳 ほおずき地獄/近藤史恵 (幻冬舎文庫)

★★★☆ 

猿若町捕物帳シリーズ、巴之丞鹿の子に続く第2弾。

吉原に現れた幽霊。現場に残されるほおずき。一体その正体は?

短くまとまっていていいですね。 また、堅物の千陰、対照的に奔放な父親の千次郎、女形の巴之丞、花魁の梅ヶ枝、 といったレギュラーキャラクターが活き活きしてていいです。 しかしオチには驚きました…。

(2002.11.02)


盤上の敵/北村薫 (講談社文庫)

★★★☆ 

「日常の謎」を書き続けた北村薫さんが、 こんな物語を書くとは!と当時騒然となった異色・問題作。

人間のむき出しの「悪意」というか、純粋な「闇」が書かれてます。 今までの北村さんのは「癒し系」の小説でしたが、 これは前書きにも書かれているように、「心を休めたい、と思っている人には不向き」 な作品かも知れません。

しかし本格としての仕掛けもしっかりしてて、見事にだまされました。 重すぎる背景と、本格としての仕掛けの見事さが、 ちょっとアンバランスにも感じられますが、 それは今までこういうタイプの小説が存在しなかったことの証明かも。

(2002.10.27)


ジョジョの奇妙な冒険−テュルプ博士の解剖学講義−/乙一 (集英社・読むジャンプ収録)

評価不能

ジョジョ第4部のノベライズを、あの乙一先生がやる、というので、 期待して買った「読むジャンプ」ですが…。

だまされました(笑)。全然完結してないし。というか、全体の1/3も行ってないのでは? だいたいテュルプ博士出てきてないし(笑)。 来年2月に「完全版」が単行本で出るそうです。 うーん、しかしこういうサギみたいな商法はどうなんだろう。 これだけのために850円出して買ってしまった人は、ご愁傷様という感じ。

内容については、まだ転がり始めた段階なので何とも言えませんが、 ジョジョらしい雰囲気を出しつつも、 乙一先生独特の強烈な「トラウマ系小学生」を主人公に据えてて、 完全版に対する期待は膨らみますね。

(2002.10.27)


悪魔のカタルシス/鯨統一郎 (幻冬舎文庫)

★★★  

鯨統一郎さんの書き下ろし。 物事の本質を見通す能力に長けた祥平は、ある日ブラウン管の中に悪魔の姿を見る。 やがて日本を支配しようとする悪魔がはびこり始め…

鯨統一郎さんの読み切りってなんか似たようなパターンが感じられますねえ。 「CANDY」もそうだったけど、 主人公がいつの間にか対立の構図に巻き込まれてて…みたいな。 途中、鯨さんお得意のこじつけ気味「悪魔談義」が入ります。

まあ、この作品を読むかどうかは自由ということで。

(2002.10.19)


トップランド2002 戦士エピソード1/清涼院流水 (幻冬舎文庫)

★★☆  

トップランドシリーズ・現代編の第2弾。 前書きによると、なんでも「一冊で完結できてないなら、これで終わり」 ということらしいのですが……。 どう見てもこれ一冊で完結はしてないよなあ。 キャラクターは「トップラン」から引き継いだものだし、 設定も「トップランド2001」では一旦リセットかかったけど、 この「トップランド2002」は「2001」を思いっきり引き継いでるし。 しかもオチが…

というわけで、ホントにこれで終わるつもりなんですかね? うーん、まあ正直言ってどうでも良くなってることは確かなんですが…。

(2002.10.18)


屍蝋の街/我孫子武丸 (双葉文庫)

★★★  

「腐食の街」に続く、 近未来クライムノベルシリーズ第2弾。 「ドク」の人格を上書きされてしまった溝口と、 彼と共に暮らすシンバ。実行犯だった赤坂護が釈放され、 やがて架空都市を通じて溝口とシンバに懸賞金が…。

最初からどうにも縛りが多くて、いまいちカタルシスが得られなかったなあ、 というのが感想。ドクと溝口の対決と決着がメインなんだろうけど、 仮想世界が絡んできたためにどうにも本筋がぼやけてしまった感じ。 たまに出てくるドクの人格も、状況把握に手間取ってたみたいだし。 で、ようやく決着したんならば、 その後のエピローグをもうちょっとやって欲しかったなあ。

(2002.10.15)


沙羅は和子の名を呼ぶ/加納朋子 (集英社文庫)

★★★  

加納朋子さんの短編集。「連作短編」ではなく、バラバラな短編10篇が収められてます。 長さも4Pの超短編から、70P超のものまでバラバラ。 加納さんというと「日常の謎」系の作家さんですけど、 この中には超常現象をそのまま扱ってるものもあり、バリエーション豊かですね。

やはりタイトル作の「沙羅は和子の名を呼ぶ」が面白かったです。 「あの時もし別の選択をしていたら…」という2つの世界がシンクロしてしまうという、 SF的には割とありがちな設定ですが、見せ方がうまい。 和子とまるで性格の異なる沙羅というキャラの性格付けがうまいですね。

(2002.10.10)


ヴィラ・マグノリアの殺人/若竹七海 (光文社文庫)

★★★  

海に臨むヴィラ・マグノリアの空家に、死体が発見された。 現場は密室。身元は不明。容疑者多数。 調べれば調べるほど怪しい人物が増えてきて、やがて第2の殺人が……。

こういう日常に殺人が入り込んできたような軽い「コージーミステリ」というそうです。 登場するのはアクが強い人物ばかり。 二転・三転する容疑者候補。 最後はなんか、それなりに収まるべきところに収まってる感じで、 若竹さんの作品にしては後味はなかなか。 しかし登場する男(特に夫)がことごとく情けないのが何とも…。

(2002.10.02)


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