推理小説の部屋

ひとこと書評


なんとかしなくちゃ。 青雲編/恩田陸 (文春文庫)

★★★★☆

大阪の老舗海産物問屋と東京の老舗和菓子店を父母に持つ、兄二人、姉一人を持つ四人きょうだいの末っ子・梯結子(かけはしゆいこ)。 彼女は幼少の頃から、日常に潜む「キモチワルイ」「モッタイナイ」を観察と閃きで解決してきた。 そんな彼女の幼少期から大学時代までを描いた「青雲編」。

三人称視点で書かれているかと思いきや、途中で「私」が突然出てくるので、「お前、誰やねん!」と思いましたが、 作家だったり出版社の話が出てくるところから、どうやら作者(恩田陸さん)自身らしい、とわかります。

結子が解決していくのは、ホントに小さなこと。込み合う砂場、不公平感が出てしまう誕生日会、生徒会会長選挙の応援演説、 学生新聞の広告効果の最大化、ファミレスの動線の改善、夕食の予定がバラバラの家族のために食材を無駄にしない仕組み、 潜在顧客へ最も効果的に届けるポスティング戦略、文化祭でのコラボレーション、生存者が最大となるような城の攻防戦戦略……。

語り口が面白く、結子が解決していくエピソードがいちいち面白いので、引き込まれます。 登場人物も魅力的な人が多いですね。特に、高校の先輩・歌子は、今後重要な場面で再登場するんだろうな、と期待させます。 ロジスティクスの分野で結子が革命を起こしていく姿が早く見たいですね。

連載が2021年6月~2022年4月で、単行本が2022年10月、文庫版が2025年10月なので、 連載が続いていればもう続編が刊行されてても良さそうなんですが、まだ単行本は刊行されていないようですね。 ということは、最低でも3年以上は待たされるのか……。

(2026.02.20)


蝦夷大王の秘宝 お江戸三爺からくり帖/芦辺拓 (ハルキ文庫)

★★★  

葛飾北斎、曲亭馬琴、鶴屋南北、3人の卓越した「爺」が組んで、 「存在しない秘宝を、存在したことにし、さらに消え失せる」という奇跡を起こす。

芦辺拓さんらしい作品。「勧善懲悪」なベースがあるので、安心して読み進められますね。 芦辺さん、癖のある爺さん好きですよねえ。

(2026.02.15)


新しい花が咲く ぼんぼん彩句/宮部みゆき (新潮文庫)

★★★  

俳句を元にして、それにあった短編を書く、という宮部みゆきさんの新たな試み「ぼんぼん彩句」シリーズが開幕。

元々SFでもサスペンスでも時代劇でもなんでもござれな宮部さんですから、 いろんなバリエーションで見せてくれます。なかなか面白い試みでした。

(2026.02.08)


数学ガール リーマン予想/結城浩 (SBクリエイティブ)

数学ガール ポアンカレ予想/結城浩 (SBクリエイティブ)

★★★  

数学ガールシリーズ、7作目にしてついに完結。6作目「ポアンカレ予想」の感想書き忘れていたので、ここにリンクだけ貼っておきます。
(なお、「ポアンカレ予想」と「リーマン予想」、どちらも日本語では「予想」ですが、 英語だと前者は conjecture、後者は hypothesis。後者はどちらかというと「仮説」ですかね)

素数という整数の話をしていたはずなのに、級数展開され、積分され、実数から複素数に展開されて、 なぜか素数の数の分布を予測できる、というのが面白いですね。

(2026.01.22)


それでも旅に出るカフェ/近藤史恵 (双葉文庫)

★★★☆ 

ときどき旅に出るカフェの続編。こちらが新刊なので本屋に行ったら、 そもそも前作読んでなかったぞ、という流れでした。

コロナ渦のカフェを描いています。キッチンカーで販売したり、色々と生き残り策を奮闘する中、 縦軸で上から目線のパティシエが現れ、何やら不穏な空気が……。

カフェのために会社を辞める、と言った彼女を素直に応援してあげられなかったことが、 ずっと主人公の心に棘のようなものとして残っているんですよね。

(2026.01.19)


ときどき旅に出るカフェ/近藤史恵 (双葉文庫)

★★★☆ 

月初めには外国を旅行し、その国々で味わってきたスイーツや飲み物を提供する気まぐれなカフェ・「カフェ・ルーズ」。 30過ぎの独身、恋人もいない瑛子は、かつての同僚が近所で開いたカフェ・ルーズにハマり、足しげく通うようになるのだが……。

一風変わったカフェを舞台とした、一種の安楽椅子探偵日常系ミステリ。 近藤さん独特の毒が随所に散りばめられつつも、ほっこりしますね。 1作が短くて読みやすいです。

(2026.01.04)


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