★★★★☆
成瀬は天下を取りにいくに続く、成瀬あかりシリーズ第2弾。 今回も各章ごとに異なる視点で描かれています。
「ときめきっ子タイム」は、ゼゼカラファンの小学生・北川みらいちゃん視点。その後もあかりと一緒にパトロールするなど、 純レギュラー化していきます。
「成瀬慶彦の憂鬱」は、これまであまり出てこなかったあかりの父・成瀬慶彦視点。 いたって普通のお父さんで、なぜあかりのようなモンスターに育ってしまったのか、理解できていないあたりが面白いですね。
「やめたいクレーマー」では、あかりがバイトをする平和堂フレンドマートに度々「お客様の声」を入れる主婦・呉間言実視点。 理解不能なあかりを避けながらも、万引き犯逮捕のためにいつの間にか協力させられていきます。
「コンビーフはうまい」は、びわ湖大津観光大使に三代就任することを宿命づけられた女子大学生・篠原かれん視点。 今時スマホも持っていない理解不能なあかりに戸惑いながら、段々親しくなっていくあたりがいいですね。
ラストの「探さないでください」は、大学進学を機に東京に引っ越した、幼馴染でゼゼカラの相方でもある島崎みゆき視点。 大晦日、サプライズで成瀬宅を訪れたみゆきだったが、あかりは「探さないでください」の書置きを残して消えていた……。 これまでの登場人物が集結するオールスターでの成瀬あかり捜索大作戦が繰り広げられます。
相変わらず面白かったです。3部作完結編の「成瀬は都を駆け抜ける」も楽しみです。また一年後くらいかな?
(2026.07.09)
★★★
美術館に仕掛けられた爆弾を探すために呼ばれた最速の探偵・掟上今日子。 犯人は内部にいる?そんな中、今日子さんが犯人の罠にかかり……。
爆弾で光を失ったがために、却って闇が見通せるようになり、爆弾処理班のエースになった、 ってまるで戯言シリーズに出てくる異能力者みたいな設定ですね。
(2026.07.07)
★★★☆
乙一さんの別名義の短編も含めて「幻夢コレクション」短編集。「安達寛高」は映画監督やる時の名義で、本名だそう。
ほんの数ページのショートショートから、中編に近いものまで、様々な作品が収録されていて、楽しめました。 中でも、タイムトラベル+パラレルワールドものの「地球に磔にされた男」はオチも含めて面白かったですね。
名義ごとの違い、「山白朝子」が一番ホラーっぽいかな。「中田永一」はファンタジーより?「乙一」はなんでもアリですかね。
(2026.06.23)
★★★
葉村晶シリーズの短編集。「水沫隠れの日々」「新春のラビリンス」「逃げ出した時刻表」「不穏な眠り」の4編を収録。
ほとんどを古本屋「MURDER BEAR BOOKSTORE」の住み込み書店員として働く葉村晶だが、 たまに舞い込む探偵業に出かけると災難続き。淀んだ池に突き落とされたり、大みそかに凍死しかけたり、 いきなり首にスタンガンを押し付けられたり、いきなり後ろから首を紐で釣られそうになったり……。 ハードボイルドとコージーの狭間を進む女探偵、って感じですかね。 これで人死にが出なければコージーなんだけど、葉村晶シリーズはちゃんと人が死ぬんですよねー。
(2026.06.09)
★★★☆
小市民シリーズ本編は完結しましたが、番外編となる都市名シリーズはまだ続くようです。 「巴里マカロンの謎」に続く短編集第2弾。
「桑港クッキーの謎」「羅馬ジェラートの謎」「倫敦スコーンの謎」「維納ザッハトルテの謎」の4編を収録。 「羅馬ジェラート」以外は船戸高校出身者で美術家・縞大我氏の美術賞受賞作「ゲイズ・アンド・シェルズ」を巡る話が絡んでいる連作短編になっています。
時期的には1年生の終わりから2年生になるくらいの時期ですね。
(2026.05.26)
★★★
Adoの自伝的小説。ある程度の事実をまぶしつつ、フィクションに仕立て上げています。
現実から逃避し、クローゼットの中に籠っていた「アオ」という少女は、 ボーカロイドや歌い手といった文化に衝撃を受け、やがて自分も歌い手として羽ばたくことを夢見る。
家庭の描写がどれだけ真実に基づいているかは推察するしかないのですが、 なかなかに歪んだ両親の愛を受けて、不遇な幼少期を過ごしてきたみたいですね。
「うっせえわ」のヒットから、初ライブ、「ONE PIECE FILM RED」の「ウタ」の歌唱パート役、 さらにはワールドツアーまで、「Ado」以降の話はほぼ事実をベースにしている感じですね。
今度のツアーのタイトルが「アオ」らしいので、過去に決着をつける時が来たのかも知れません。
(2026.05.21)
★★★
女探偵・葉村晶シリーズ、第5弾。老女の尾行をしていた葉村だったが、転落してきた老女に流血し病院へ。 老女の所有する木造アパートに住むことになるも、真夜中に火の手が上がり、命からがら抜け出し……。 相変わらず不運な女探偵の、明日はどっちだ?
何気ない描写が後で意味を持ってくる、伏線の張り方が相変わらず絶妙ですね。 扱っている事件は結構シリアスなんですが、あまりにも不運の連鎖が酷くて、一周回って笑ってしまいますね。 もう少し報われて欲しいです。
(2026.04.23)
★★★
予告状を出し「盗品を盗む」という神出鬼没の「怪盗炒飯」とその相棒「唐揚げキャット」。 二人を捕まえるため、潜入捜査官の潤子は、予告状の場所に潜入するが、 なぜかその現場にはいつも推しの天草茅夢が。 果たして「怪盗炒飯」の正体は推しなのか?
吹雪で閉じ込められた雪密室、人口の孤島、暴走する豪華寝台列車、といったベタなミステリの場面から、 「名探偵津田」を彷彿とさせる、登場人物が強制的に名探偵にさせられてしまうバラエティ番組設定まで。
そして今回も「推し」と「ジャンク飯」は健在。しかも今回は推しが自炊してくれるので、 背徳感もマシマシです。
(2026.03.21)
★★★★☆
大阪の老舗海産物問屋と東京の老舗和菓子店を父母に持つ、兄二人、姉一人を持つ四人きょうだいの末っ子・梯結子(かけはしゆいこ)。 彼女は幼少の頃から、日常に潜む「キモチワルイ」「モッタイナイ」を観察と閃きで解決してきた。 そんな彼女の幼少期から大学時代までを描いた「青雲編」。
三人称視点で書かれているかと思いきや、途中で「私」が突然出てくるので、「お前、誰やねん!」と思いましたが、 作家だったり出版社の話が出てくるところから、どうやら作者(恩田陸さん)自身らしい、とわかります。
結子が解決していくのは、ホントに小さなこと。込み合う砂場、不公平感が出てしまう誕生日会、生徒会会長選挙の応援演説、 学生新聞の広告効果の最大化、ファミレスの動線の改善、夕食の予定がバラバラの家族のために食材を無駄にしない仕組み、 潜在顧客へ最も効果的に届けるポスティング戦略、文化祭でのコラボレーション、生存者が最大となるような城の攻防戦戦略……。
語り口が面白く、結子が解決していくエピソードがいちいち面白いので、引き込まれます。 登場人物も魅力的な人が多いですね。特に、高校の先輩・歌子は、今後重要な場面で再登場するんだろうな、と期待させます。 ロジスティクスの分野で結子が革命を起こしていく姿が早く見たいですね。
連載が2021年6月~2022年4月で、単行本が2022年10月、文庫版が2025年10月なので、 連載が続いていればもう続編が刊行されてても良さそうなんですが、まだ単行本は刊行されていないようですね。 ということは、最低でも3年以上は待たされるのか……。
(2026.02.20)
★★★
葛飾北斎、曲亭馬琴、鶴屋南北、3人の卓越した「爺」が組んで、 「存在しない秘宝を、存在したことにし、さらに消え失せる」という奇跡を起こす。
芦辺拓さんらしい作品。「勧善懲悪」なベースがあるので、安心して読み進められますね。 芦辺さん、癖のある爺さん好きですよねえ。
(2026.02.15)
★★★
俳句を元にして、それにあった短編を書く、という宮部みゆきさんの新たな試み「ぼんぼん彩句」シリーズが開幕。
元々SFでもサスペンスでも時代劇でもなんでもござれな宮部さんですから、 いろんなバリエーションで見せてくれます。なかなか面白い試みでした。
(2026.02.08)
★★★
数学ガールシリーズ、7作目にしてついに完結。6作目「ポアンカレ予想」の感想書き忘れていたので、ここにリンクだけ貼っておきます。
(なお、「ポアンカレ予想」と「リーマン予想」、どちらも日本語では「予想」ですが、
英語だと前者は conjecture、後者は hypothesis。後者はどちらかというと「仮説」ですかね)
素数という整数の話をしていたはずなのに、級数展開され、積分され、実数から複素数に展開されて、 なぜか素数の数の分布を予測できる、というのが面白いですね。
(2026.01.22)
★★★☆
ときどき旅に出るカフェの続編。こちらが新刊なので本屋に行ったら、 そもそも前作読んでなかったぞ、という流れでした。
コロナ渦のカフェを描いています。キッチンカーで販売したり、色々と生き残り策を奮闘する中、 縦軸で上から目線のパティシエが現れ、何やら不穏な空気が……。
カフェのために会社を辞める、と言った彼女を素直に応援してあげられなかったことが、 ずっと主人公の心に棘のようなものとして残っているんですよね。
(2026.01.19)
★★★☆
月初めには外国を旅行し、その国々で味わってきたスイーツや飲み物を提供する気まぐれなカフェ・「カフェ・ルーズ」。 30過ぎの独身、恋人もいない瑛子は、かつての同僚が近所で開いたカフェ・ルーズにハマり、足しげく通うようになるのだが……。
一風変わったカフェを舞台とした、一種の安楽椅子探偵日常系ミステリ。 近藤さん独特の毒が随所に散りばめられつつも、ほっこりしますね。 1作が短くて読みやすいです。
(2026.01.04)