推理小説の部屋

ひとこと書評


首折り男のための協奏曲/伊坂幸太郎 (新潮文庫)

★★★☆ 

必ず首を折って殺す殺し屋「首折り男」、そして一流の泥棒でもある黒澤。 そのどちらかが、あるいは両方がかかわった短編を集めた短編集。

やっと漫画「Waltz」の元ネタが読めた……。

(2016.12.31)


雪煙チェイス/東野圭吾 (実業之日本社文庫)

★★★☆ 

文庫書下ろし作品。殺人の容疑がかけられた大学生・竜実。無実を証明するためには、正体不明の美人スノーボーダー「女神」を探すしかない!

なかなか強引な設定ですが、一気に読ませるあたりはさすが。もう一組の主人公ともいえる、所轄の刑事・小杉にも、それなりの物語が用意されているあたりが憎いですね。

(2016.12.11)


キウイγは時計仕掛け/森博嗣 (講談社文庫)

★★★  

Gシリーズ。伊豆で開催される建築学会の会場となった大学に、γの字が刻まれたキウイが一つ届けられた。 プルトップがつけられ、手りゅう弾に見立てられたキウイ。そして学長が射殺された……。

「目薬α」「ジグβ」「キウイγ」といきなり先頭から3文字続いたと思ったら、 次からは完結編3部作となる「χの悲劇」が始まるようですね。ギリシャ文字にYやZってあったっけ、 と思ったら、「Υ(ユプシロン)」と「Ζ(ゼータ)」がありましたね。 でも小文字にしちゃうと「υ」と「ζ」だからあんまりYとZっぽくないんだよな。

加賀谷さんが社会人になってもまだまだ乙女でした。

(2016.12.03)


夜の国のクーパー/伊坂幸太郎 (創元推理文庫)

★★★☆ 

「鉄の国」との戦争に敗れたある小さな国。「鉄の国」の兵士たちに乗り込まれ、国王も殺される。 果たしてこのまま支配されてしまうのか。一方その頃、現代日本で妻に浮気された男が、見知らぬ土地で猫と会話をしていた……。

猫の視点から観た、ある国の童話。ファンタジーかと思いきや、いきなり現代日本の男がもう一人の視点として登場することで、 軽い混乱をもたらします。そこら辺も含めて大きな仕掛けへの伏線になっているのですが。

(2016.11.26)


舟を編む/三浦しをん (光文社文庫)

★★★★ 

10月から「ノイタミナ」でアニメ化もされた、本屋大賞受賞作。 「辞書を作る」という地味な仕事に従事する人々を描いたお仕事小説。

不器用だが一途な主人公「馬締(まじめ)」を中心として進みますが、 一人称視点が、チャラ男の西岡だったり、新人の岸辺だったりに移ったりすることで、 飽きさせない構成になってます。

(2016.11.12)


祈りの幕が下りる時/東野圭吾 (講談社文庫)

★★★★ 

加賀恭一郎シリーズ長編。

加賀の母親の死。それに関連して、二つの死が関連していることが明らかになる。 被害者も容疑者も自分に関係しているなんてことがあるのだろうか? 加賀の執念の捜査が始まる……。

加賀が日本橋署へと移ってきた理由と、その真相が明らかになるということで、 「新参者」から続いた日本橋署編の完結編となる作品です。 加賀のキャラクターに深みを加える作品となっていました。

(2016.11.12)


貴族探偵対女探偵/麻耶雄嵩 (集英社文庫)

★★★  

貴族探偵の続編。 自らは一切推理せず、運転手や執事、使用人に推理を全部任せてしまう、 という異色の探偵ですが、今回は女探偵・高徳愛香との対決という形をとっており、 よりコメディ色が強くなっています。

美袋に対するメルカトルのように、愛香に対する貴族探偵、という感じで、 ドSな探偵を書かせたら一級品ですよね、やっぱり。

同じシチュエーションでも複数の推理が可能で、ひっくり返るという趣向は、 作る方も大変だと思うのですが、よくできてますね。 最終話のひっくり返し方も見事でした。

(2016.11.01)


QED 〜flumen〜 ホームズの真実/高田崇史 (講談社文庫)

★★★  

QEDシリーズ、本編は「伊勢の曙光」で完結しましたが、 外伝的扱いの「〜flumen〜」で本当の完結編のようです。

ラストにQEDシリーズの中でも異端の「ホームズ」をもう1回持ってくるあたり、 思い入れがあるんでしょうね。

(2016.10.23)


ライオンの棲む街 平塚おんな探偵の事件簿1/東川篤哉 (祥伝社文庫)

★★★  

金髪ど派手でガサツな女探偵「雌ライオン」こと生野エルザと、同級生で地味な助手・美伽の女性コンビで送る新シリーズ。 これまで東川作品では国分寺とか中央線沿線が多かった印象ですが、 今度は東海道線沿いの平塚が舞台。

例によってギャグが随所に散りばめられているんですが、 しっかりと物理トリックを絡めてくるあたりが東川さん作品だなあ、と。

(2016.10.13)


下戸は勘定に入れません/西澤保彦 (中公文庫)

★★★☆ 

西澤さんお得意の超能力モノ、なのですが、超能力はメインのトリックや事件には、超能力は絡まず、 後からの酩酊検証に使われるのみ、というところが異なります。

超能力の発現条件は、主人公を含めて2人以上で同じ酒を飲む。 もし過去に同じ日付・同じ曜日に、同じような条件で酒を飲んだ経験があった場合、 意識のみがその時点に滑り落ちて、過去の映像を追体験することができる、 というもの。

こんな発動条件の厳しそうな超能力で、ちゃんと連作ミステリとして成立させるあたり、 見事だなあ、と。最初はダウナーな死にたがりの主人公だと思っていたのに、 終わってみると何ともハッピーな結末になってました。

(2016.10.04)


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