推理小説の部屋

ひとこと書評


金田一耕助、パノラマ島へ行く/芦辺拓 (角川文庫)

★★★  

金田一耕助と明智小五郎のパスティーシュシリーズ第3弾。 表題作「金田一耕助、パノラマ島へ行く」と「明智小五郎、獄門島へ行く」の2作を収録。

どちらも、原作に登場した舞台を踏まえた上での、かなり大がかりなトリック。 実現性はともかく、なかなか楽しめました。

原作読んでるともっと楽しめるんだろうな、とは思いました。 まあ、知らなくともそれなりに楽しめましたけど。

(2016.03.31)


リカーシブル/米澤穂信 (新潮文庫)

★★★  

父の失踪により、義母の故郷に越してきた少女・ハルカ。 中学でも極力目立たないような処世術を身につけているハルカだったが、 血の繋がらない弟のサトルが妙なことを口走り始める。 それはあたかも、町に伝わる「タマナヒメ」の伝承のようだった……。

歴代の米澤作品ヒロインの中でも、かなりの不幸っぷり。 弟の事をバカだウザい足手まといと思いつつ、 見捨てられない人の良さがいいですね。

タイトルが「リピータブル(繰り返せる)」ではなく「リカーシブル(再帰できる)」なところが、 「タマナヒメ」の不気味さを何とも暗示させていると思いました。 単なる繰り返しではなく、歴代の積み重ねがそのまま引き継がれている、というか。

(2016.03.31)


金田一耕助 vs 明智小五郎/芦辺拓 (角川文庫)

★★★  

さきにふたたびの方を読んでしまいましたが、こちらが第1弾の方。

「ふたたび」では酷い目に遭わされまくっていたイメージの強い金田一耕助ですが、 こちらではちゃんと名探偵してますね。

怪人二十面相が出てきたり、江戸川乱歩本人が出てきたり、と作品のバリエーションも豊かでした。

(2016.03.19)


玉村警部補の災難/海堂尊 (宝島社文庫)

★★★  

警察庁のキレ者・「デジタル・ハウンドドッグ」こと加納警視正。 その加納にいつも振り回される部下、玉村警部補にフォーカスを当てたスピンオフ短編集。

なるほど、白鳥に振り回される田口と、加納に振り回される玉村、と二人は似た境遇だったんですね。

必ずしも医学と無関係な犯罪(ただし科学的トリックは使われていたり)が含まれていたりと、 海堂先生は医学ミステリだけではないところが見られました。

(2016.03.14)


金田一耕助 vs 明智小五郎 ふたたび/芦辺拓 (角川文庫)

★★★  

芦辺拓さんのパスティーシュシリーズ。

「金田一耕助 vs 明智小五郎」の第二弾、ということで、前作は読んでいると思い込んでいたのですが、 読んでいたのは角川文庫でなく創元推理文庫から出ている「明智小五郎対金田一耕助」の方でした。 ややこしいな!

まあ、多分読む順番はそんなに影響しないと思います。この後には「金田一耕助、パノラマ島に行く」ってのも控えていることですし。

内容は、戦時中あるいは戦後の混乱期に、金田一耕助が酷い目に遭わされて、それを颯爽と現れて救う明智小五郎、という感じでした。

(2016.03.08)


子どもの王様/殊能将之 (講談社文庫)

★★★  

子供向けの「講談社ミステリーランド」として刊行されたものの文庫化。 引きこもりの親友・トモヤが語る奇妙な作り話。 しかしその作り話そっくりの「子どもの王様」をショウタは街で見かける。 その事を告げるとトモヤは怯えだした。 果たして「子どもの王様」の正体は?

子供向けということもあって、殊能将之さんの作品の中では比較的素直な作り。 しかしサスペンスもあって、子供が読んだら結構怖いだろうな、と思います。

しかし殊能将之さん、2013年に亡くなられていたんですね。 多才な方でしたのに、若くして亡くなられて、もったいない。

(2016.03.06)


零崎人識の人間関係 戯言遣いとの関係

★★★  

人間シリーズ完結編・関係四部作の4作目。 そして人間シリーズの最後の完結編。

戯言シリーズ第2作「クビシメロマンティスト 人間失格・零崎人識」における京都の連続通り魔殺人事件の、別視点物語。

「人間シリーズ」そのものが、「戯言シリーズ」の脇役・零崎人識を主人公にしたスピンオフシリーズみたいなもんですけど、 こうして別視点から「戯言遣い」を語らせると、およそ主人公らしくないですね。 まだ零崎や人類最悪の方が人間味がある感じ。

(2016.03.01)


零崎人識の人間関係 零崎双識との関係/西尾維新(講談社文庫)

★★★  

「小さな戦争」に巻き込まれ、姿をくらました「自殺志願(マインドレンデル)」こと零崎双識。 その兄と間違われて、「呪い名」6名による「裏切同盟」に狙われることになった零崎人識。

人間シリーズ完結編・関係四部作の3作目。 「殺し名」に比べる裏方っぽい存在だった「呪い名」六名を全面的にフィーチャー。 特殊能力バトルと、それを理不尽な理屈で切り抜けていく零崎人識の戦いにフォーカスした内容。

タイトルが「零崎双識との関係」の割には、零崎双識は最後にしか出てこない、という。

(2016.02.27)


零崎人識の人間関係 無桐伊織との関係/西尾維新 (講談社文庫)

★★★  

「人類最強」哀川潤が、「生涯無敗」六何我樹丸に挑む。 同行するのは、零崎一賊の生き残り、零崎人識と無桐伊織兄妹、 そして兄である石凪萌太の死を機に能力を失った少女・闇口崩子。

人間シリーズ完結編・関係四部作の2作目。 ですが、既に零崎一賊が全滅していたりして、時系列的にはネコソギラジカルの後、 ってことになるんですかね。

途中に挟まれた論理パズルといい、なかなかトリッキーな構成でした。

(2016.02.27)


野球の国のアリス/北村薫 (講談社文庫)

★★★  

講談社「ミステリーランド」向けの作品。

鏡の国に迷い込んだアリスは、負け進むトーナメントの全国中学野球大会最終戦へと出場することに。 微妙に異なる鏡の国で、アリスは果たして目的を達成できるのか?

「不思議の国のアリス」「鏡の国のアリス」を踏まえたパスティーシュが楽しいですね。 ライバルキャラが仲間になるお約束の展開も心地よいですね。 鏡の国の側のアリスがどんな暮らしをしていたのかも気になりますね。

(2015.02.21)


菩提樹荘の殺人/有栖川有栖 (文春文庫)

★★★  

火村と有栖シリーズの中編3編と短編1編を収録。テーマは「若さ」。

高校生を狙う未成年による連続殺人を追う「アポロンのナイフ」。 売れ始めてきたお笑い芸人の女性の死の謎は?「雛人形を笑え」。 火村の大学生時代のエピソードを語る短編「探偵、青の時代」。 高校時代のアリスの悲恋が語られる「菩提樹荘の殺人」。

しかし火村と有栖シリーズが連ドラになるとは思わなかったなあ。

(2016.02.18)


文豪ストレイドッグス外伝 綾辻行人 vs. 京極夏彦/朝霧カフカ (角川書店)

★★★☆ 

4月からアニメ化される「文豪ストレイドッグス」の外伝。 現存する(?)作家である、綾辻行人と京極夏彦をフィーチャーした作品になってます。

綾辻先生かっけー!異能「Another」は、推理によって犯人を特定すると、 その犯人が全ての因果を越えて事故死してしまう、という究極の能力。 その能力を逆手に取った罠の掛け方がまた見事でした。 京極夏彦さんも格を落としていないところがうまい。 叙述にも気を使っていて、ちゃんとした本格ミステリになってました。

(2016.02.11)


私の嫌いな探偵/東川篤哉 (光文社文庫)

★★★  

烏賊川市シリーズ第7弾。剛力彩芽主演でドラマ化もされた時のタイトルですね。

「謎解きはディナーのあとで」のヒット後に書かれたのかどうかは定かではありませんが、 やはり男女ペアの方が転がしやすいのか、ツッコミ役で鵜飼探偵事務所の大家でもある朱美が、全作品で助手役を務めることに。 おかげで割を食ったのが本来の助手役だったはずの戸村くん。 死んだことにされたり、信頼できない方の助手にされたり、と散々な扱いでした。

(2016.02.03)


ジグβは神ですか/森博嗣 (講談社文庫)

★★★  

目薬αで殺菌しますから数年、 加部谷は役所に就職、山吹は助教に、海月は西之園のW大へと移動、 とバラバラになったかつての仲間が、美之里に集結。 芸術家たちの楽園とも、宗教団体と関係があるとも噂される美之里で、 フィルムで全身をラッピングされた女性の全裸死体が見つかる。 そして真賀田四季の影が……。

西之園萌絵の叔母である佐々木睦子やら、瀬在丸紅子やらまで出てきて、 真賀田四季関連のシリーズ(Gシリーズだけでなく、全て)の終わりが近い、 って感じですね。

(2016.01.31)


ストーリー・セラー/有川浩 (幻冬舎文庫)

★★★☆ 

女性小説家と、その小説が大好きな男性との、出逢いと別れを描いた中編2作。

Side Aは女性側が、Side Bは男性側が、死に向き合います。 死に向き合った時、二人はどうするのか。

メタ表現が多いため、どこか自伝的な雰囲気も感じさせる作品ですね。

(2016.01.23)


残り全部バケーション/伊坂幸太郎 (集英社文庫)

★★★★ 

浮気が発覚して一家離散する直前の親子3人。 あくどい仕事の代行業をする溝口と岡田のコンビ。 彼らと触れ合った人々の、不思議な化学反応が紡ぐ小さな奇跡の物語。

最初の章を読んだ時、まさか岡田・溝口コンビの方が主役だったとは思いませんでした。 伊坂さんの書く悪人は、悪人なんだけどどこか憎めない感じなんですが、 この岡田と溝口もまさにそんな感じですね。

時系列もバラバラな各章が最終章に繋がって行くところは、さすがの構成でした。

(2016.01.23)


奇譚を売る店/芦辺拓 (光文社文庫)

★★★  

「――また買ってしまった。」から始まる、古本屋に魅せられ、古本に囚われた者たちの物語を収めた奇想短編集。

芦辺拓先生といえば、森江春策を探偵とした本格系ミステリがメインですが、 この作品は初の本格的な幻想小説となるようです。 作品の世界と現実の境目が曖昧になり、読者が作品世界に囚われてしまうような作品が収められています。

(2016.01.16)


魔法使いは完全犯罪の夢を見るか?/東川篤哉 (文春文庫)

★★★  

東川篤哉先生の新シリーズ。魔法使いマリィが登場。推理物に魔法という反則技が加わると、果たしてどんな科学反応が起こるのか?

東川作品でお馴染みの国分寺署と違って、八王子署の小山田刑事と、その上司の椿姫こと椿木綾乃警部のコンビ。 しかしフィクションである国分寺署と違って(※国分寺市には警察署がなく、隣の国立市警が国分寺市も管轄している)、 八王子署って実在しますよね。「多摩ホーム」って建設会社も普通にあるし。

形式は倒叙で、魔法の力であっさり犯人が誰かまでは判明してしまうのですが、 犯人の仕掛けたトリックを崩す証拠が得られないと逮捕できない、 ってところがポイント。舞台設定に魔法の力は借りたりしてますが、 ちゃんとした推理物になってます。

(2016.01.10)


幻視時代/西澤保彦 (中公文庫)

★★★☆ 

高校時代、文芸部から美少女高校生として鮮烈なデビューを飾ったものの、 突然の怪死を遂げた風祭飛鳥。 22年後、悠人と後輩・オークラの前に現れた一枚の写真には、 その写真の4年前に死んだはずの彼女の姿がくっきりと写っていた……。

怪奇現象だから、SF新本格系か?と思いきや、ちゃんとロジック (といってもお得意の酩酊妄想推理なんですが)で説明されます。 まあ、事実かどうかは開明されないんですが、 一応納得の行く筋は付けられます。

酩酊妄想推理なんだから、うまくすればタック&タカチシリーズでもいけたんじゃね? という気も一瞬したんですけど、やっぱり「動機」部分に主人公の生い立ちが深く関わっているので無理ですね。

(2016.01.06)


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