推理小説の部屋

ひとこと書評


ヒトクイマジカル 殺戮奇術の匂宮兄妹/西尾維新 (講談社文庫)

★★★  

戯言シリーズ第6弾。「ぼく」の転換点になる話、なのかな?

闇口・石凪というのもどうやら「殺し名」のようで、 いっきーの住んでるアパートは、何というか、異形の者の巣?

最終決戦に向けて「十三階段」および「西東天」という天敵の存在も明らかになりました。

(2008.12.28)


日暮らし(上)(中)(下)/宮部みゆき (講談社文庫)

★★★☆ 

ぼんくらの後日譚にして完結編、という位置づけの時代捕物帖。

上巻は主役の異なる短編4作を収録。一見バラバラに見えたこれらの話が伏線となって、 中巻〜下巻の長編「日暮らし」へと突入する、という構成は「ぼんくら」を踏襲してます。

面倒くさがりやの同心・平四郎、平四郎の甥で実質的な探偵役である美少年・弓之介、 人間レコーダー少年・おでこ、その他お徳や佐吉といった前作のメインキャラ達も総出演し、 湊屋の封印された真実と向き合うことになります。

相変わらず読み易く、人情物ならではの満足感がありますね。

(2008.12.14)


レヴォリューションNo.3/金城一紀 (角川文庫)

★★★☆ 

生物教師ドクター・モローの言葉に感化されてしまった僕たちが結成した「ザ・ゾンビーズ」。 「シュショウ」を目指すヒロシ、「差別に負けずにトップを目指す」舜臣、 「七つの海に女を作る」アギー、「史上の最弱のヒキを持つ男」山下、などなど個性的な面々によって、 今年も難攻不落のお嬢様女子高の学園祭に潜入する計画を練り上げるのであった。

オチコボレ男子高校生たちが、「優秀な遺伝子」を得るために奔走する、「ザ・ゾンビーズ」シリーズ第1弾。 「レヴォリューションNo.3」「ラン、ボーイズ、ラン」「異教徒たちの踊り」の3編を収録。 キャラの個性と、その個性を活かしたトラブルに対する作戦の妙が絶妙で、惹き込まれます。 「ラン、ボーイズ、ラン」は時系列には最終回なのかな? 今後も楽しみなシリーズです。

(2008.12.07)


螺鈿迷宮(上)(下)/海堂尊 (角川文庫)

★★★  

東城大学と並ぶ桜宮市の医療のシンボル・桜宮病院。 終末医療のモデルケースとして注目されている病院だったが、 そこには死の香りが漂っていた。 「ナイチンゲール」の裏で進行していたもう一つの事件の真相が今明らかに。

今作の主人公は田口先生ではなくって、 モラトリアム医学生・「アンラッキートルネード」こと天馬大吉君。 ただし、当然「火食い鳥」白鳥は出てきます。 そして、「バチスタ」「ナイチンゲール」で名前だけ出てきていた白鳥の唯一の部下、 「氷姫」こと姫宮がついに登場。そのコードネームから、どんなツンデレさんなのかと想像していたら、 とんでもないドジっ娘ナースでした……。

今回のテーマは「終末医療」。またしても行政の問題点が大きくクローズアップ。 さらに「バチスタ」でも出てきたAiがダメ押しのごとく出てきます。

しかしラストのアレは、やっぱりリリィさんの方なんでしょうねえ。

(2008.12.04)


探偵伯爵と僕/森博嗣 (講談社文庫)

★★★  

夏休み、新太は公園で、真っ黒な服を着た不思議な大人・探偵伯爵と出逢った。 そんな中、親友のハリィが行方不明になり…。

小学生が語り手なので、ジュブナイル系なのかと思って読み進めていくと、 意外な方向に話は転がっていきます。 むしろ、子供に大人の世界のドロドロした汚さみたいなものを認識させるための物語なのかな。

最後のオチは、とってつけた感もありますが、なるほどそういう風に読み返すとまた違った感じに読めますね。

(2008.11.24)


QED 〜ventus〜 熊野の残照/高田崇史 (講談社文庫)

★★★  

QEDシリーズの第10弾にして、〜ventus〜としては2作目。 巻末の解説によると、ventusはタタル達が直接現実の事件には関与しないところがポイントらしいです。 というわけで、今回は薬剤師の旅行で熊野まで。

これまでの奈々の一人称で語られることがほとんどだったと思いますが、 今回は神山禮子という女性視点で語られているのも特徴。 おかげでラブフィルターがかかっていない状態の、変人タタルの様子が客観的に描かれているのが面白いです。 特に顔色変えずに延々と飲み続けるタタル達に心の中でツッコミを入れまくる様子が楽し過ぎます。

熊ツ崎と奈々の妹・沙織も終盤で合流。 こんな最後に出てきてどうするつもりだろうと思ったら、 どうやら次の話「QED 神器封殺」にそのまま続くようですね。

(2008.11.16)


新ほたる物語/あさのあつこ (ピュアフル文庫)

★★★  

ほたる館シリーズ第4弾にして完結篇。なぜ「4」ではなく「新」なのかと思ったら、 執筆された時期が随分とずれているからなんですね。

春に6年生になる一子たち。 特別室に予約を入れたどこかしっくり来ない親子3人組、 様子のおかしいおじいさん、様々な客といろんな事件を通じて、 一子たちは大人になる、ということを学んでいく。

まだいくらでも続けられそうではありますが、一応これで完結ということのようです。

(2008.11.15)


saku saku オフィシャルブック (太田出版)

★★★  

tvkローカルな音楽情報バラエティ「saku saku」。 サブカル雑誌「コンティニュー」での連載に加えて、オリジナル企画を満載した、 番組初の公式オフィシャル本。

ジブリ博物館行ったり、水族館行ったり、高尾山登ったり、 といつも屋根の上だけで進行している番組とは思えないアクティブっぷり。 他にも優ちゃん×米ックスの手作り弁当対決とか、 番組でもちょっとやってた黒幕先生×浪人生Neoのツンデレカフェ体験記とか、 なかなか面白い企画が多くて楽しめました。

(2008.11.09)


フェティッシュ/西澤保彦 (集英社文庫)

★★★  

葬式の場で黒タイツの女性を盗撮する老人、人と触れ合うことに嫌悪感を持ち始めた看護婦、 同棲相手に捨てられた御曹司、息子の死の現実から逃避した家出女性、自らの手を愛する手フェチの刑事…。 男女問わず惹き寄せる美少年・クルミの正体は…?

視点が入れ替わる連作短編集。色々なこだわりを持つ人物達が、 一人の美少年に惹きつけられて行く様子が丹念に描かれています。 クルミの存在自体は飛び道具のようですが、 それ以外のロジックの辻褄合わせっぷりは、さすが西澤さん、というところでしょうか。

(2008.10.26)


サイコロジカル(上)兎吊木垓輔の戯言殺し・(下)曳かれ者の小唄/西尾維新 (講談社文庫)

★★★  

戯言シリーズ第4弾。 《堕落三昧(マッド・デモン)》斜道卿壱郎博士の実験施設から、 玖渚友のかつての「チーム」の一人、《害悪細菌(グリーングリーングリーン)》兎吊木垓輔を、救い出すため、ぼく・友・音々の3人はやってきたのだが…。

天才キャラが何人出てくるのか、って感じですが。 青の友、赤の潤に対して、緑の兎吊木垓輔、って感じでしょうか。 「ぼく」の鬱屈した過去も段々と明らかになり、 終末に向かって走り出したようです。

(2008.10.19)


ナイチンゲールの沈黙(上)(下)/海堂尊 (宝島社文庫)

★★★★ 

田口&白鳥コンビによる桜宮シリーズ第2弾。 今度の舞台は小児科。

東城大学医学部付属病院の看護士の小夜が、忘年会でぶっちぎりの桜宮大賞を受賞したその夜、 酔いどれ迦陵頻伽こと水落冴子が、田口の管理するVIPルーム・ドア・トゥー・ヘヴンに入院してきた。 そんな中、小児科病棟に入院する少年の父親が殺される殺人事件が起こった。

「チーム・バチスタの栄光」に比べると、謎の吸引力が弱いのは仕方のないところでしょうか。 そもそも謎らしい謎が出てくるのは上巻の後半に入ってからですし。 「殺人事件のアリバイの謎」「小児科の窮状」「冴子や小夜の持つ歌の力」 あたりがいまいち融合しきれずに終わってしまったかなあ。 白鳥が絡んでくる経緯もかなり強引な感じですし。

ただ、今後の「桜宮サーガ」とも呼ぶべき作品群に向けての伏線は張りまくりらしいので、 期待しておきます。

(2008.10.13)


チーム・バチスタの栄光(上)(下)/海堂尊 (宝島社文庫)

★★★★ 

出世コースから自ら外れ、「愚痴外来」と陰口を叩かれる不定愁訴外来の万年講師・田口の下に、 院長自ら特命が下った。東城大学付属病院におけるエース・桐生率いる天才外科チーム「チーム・バチスタ」における、 連続術中死の謎を解くために内部調査をしろというのだ。 医療過誤死か、それとも殺人なのか? 田口の聞き取り調査が始まった。

第4回「このミス」大賞受賞作。タイトルからすると、「医龍」のような医療ドラマを舞台としたサスペンスを想像しますが、 描かれ方はむしろコメディチック。メインは聞き取り調査による対話劇なんですが、 出て来るキャラがみんな一癖も二癖もある個性派揃いで、飽きさせません。 下巻から登場する白鳥のキャラがまた強烈で、 こんな奴周りにいたら嫌だと思いますが、傍から見ている分には面白いですね。

今度TVドラマ化されるそうで、伊藤淳史が田口役、仲村トオルが白鳥役ですか。 イメージと違うけどそれは仕方ないか。どうやら原作とも違う結末らしいので、 楽しみにしてます。

(2008.10.09)


チャット隠れ鬼/山口雅也 (光文社文庫)

★★★  

中学校教師の祭戸は、子供を犯罪から守るサイバー・エンジェルの仕事を命じられた。 嫌々引き受けた祭戸だったが、やがてインターネットの匿名性と、 チャットの面白さに嵌っていく。 そんな折、チャットで出会った一人が異常小児性愛者であることに気づく。

チャットをテーマにしたミステリ、というわけで、横書き。 載ってた媒体が週刊アスキーという、比較的一般向けの雑誌だったせいか、 いつもの山口雅也さんの作品に比べると素直かな、と。 幕間の叙述やアリバイトリックも大体予想つきましたしね。

しかしこういう新しい題材に次々と挑戦する姿勢は尊敬しますね。

(2008.10.08)


悪党たちは千里を走る/貫井徳郎 (集英社)

★★★★ 

お人好しの二流詐欺師コンビ、高杉と園部。企てたのは犬の誘拐? 美人同業者や生意気な少年まで計画に加わり、一世一代の大仕事に発展。 しかし準備万端だったはずの計画は意外な方向に転がり始め…。

ユーモアを加えた誘拐モノ。キャラクターたちの丁々発止のやり取りが面白いです。 誘拐モノの一つの見所は、いかにして安全に身代金を受け取るか? という点だと思いますが、 警察はおろか、被害者とも会わずに手に入れる、 かなり画期的というか今風な手が使われてます。

貫井さんらしく伏線も色々と張り巡らせてあって、結末も満足。 欲を言えばもう少しエンディングの余韻を楽しませて欲しかったかなあ。 高杉、園田、菜摘子、巧、4人それぞれの視点での短編で「その後」を書いて欲しいくらいです。

(2008.10.03)


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