推理小説の部屋

ひとこと書評


暗黒館の殺人(上)(下)/綾辻行人 (講談社ノベルス)

★★★★★

前作「黒猫館の殺人」から12年、ようやく発売された「館シリーズ」の新作。 なんと上下巻というボリュームで登場。

私の国内ミステリ体験の原点とも言える「館シリーズ」の新作がついに登場。 私が物心ついた国内ミステリを読み始めるようになった時には、 既に「黒猫館」まで発売されてたと記憶しているので、 リアルタイムで「新作」が出るのはこれが初めての体験。 ああ、こんな時が来るとは(←少し大げさ)。

それにしても待たせただけあって、すごいボリュームです。 京極堂シリーズじゃないんだから、上下巻って…とも思いましたが、 読み始めると引き込まれてもう一気読みでした。

多くを語るとどうしてもネタバレしてしまいそうなので、 内容に深く触れておくことはやめておきますが、さすが待たされただけあって、 面白かったです。 シリーズの特徴である「仕掛け」、 今回でいうところの「“世界”を統べる冷ややかな悪意の所在」も健在。 さらにシリーズファンへのサービス?と思われる、十角形の塔やら、 幻視画家・藤沼一成やら、推理作家・宮垣葉太郎やら、古峨精計社やら、 といった名前も出てきます。

しかしこの構成はかなり大胆というか、反則ギリギリな感じも。 まあ、この「反則技」が犯行や推理に用いられているわけではないので、 どんなに理不尽でもやはりこれは立派な「本格ミステリ」なんですが。

「抜け穴」をめぐる論理、の二転三転する様子も本格っぽくて良かったです。 しかし「あとがき」でも書かれてますけど、第7作でここまでやってしまうと、 続きが書きづらそうだなあ、とも思います。

というわけで、幸せな時間をすごさせていただきました。 待たされた分「☆」半分くらいおまけで、満点つけておきます。

(↑ああ、我ながら大分興奮してるなあ。私自身が大分「館シリーズ」びいきなので、 その分を割り引いて受け取ってくださいませ)

(2004.09.24)


名探偵は最終局に謎を解く/戸松淳矩 (創元推理文庫)

★★★  

「名探偵は〜謎を解く」シリーズの第3弾。雑誌に掲載されたまま単行本化されなかったそうなので、 これが初の刊行だそうです。

相変わらず下町の高校生3人組が主役。 オバケ屋敷での死体消失に始まり、大安の度に現れどうでもいい物を盗んでいく怪盗・稲田小僧が出現したり、 とにかく色んな出来事が起きますが、それらが一つの目的に向かって収束していく様子は見事。 今回の探偵役は将棋プロの桃井八段。

前2作に比べると、人死にが出そうな事件はなくって、 まあこれくらいの事件の方が下町人情物には似合っているな、という感じでした。

(2004.09.10)


盗作・高校殺人事件/辻真先 (創元推理文庫)

★★★  

「仮題・中学殺人事件」に続く、薩次とキリコのコンビが送る、 受験シリーズ3部作の2作目。

前作と同じく、作中作とそれを取り囲む現実との二重写し、 というメタミステリ的な構造にになってます。 帯のキャッチコピーは

作者は
被害者です
犯人です
探偵です
この作品は
そんな推理小説です!
これは嘘ではありません。前作では「犯人=読者」という仕掛けのために、 プロットの方に大分無理があった気もするのですが、 今回は結構綺麗にまとまっていたと思います。

一応お約束の密室が2回出てきたりしますが、 メインは動機と「盗作」に絡むプロセスでしょうか。

それはそれとして、このコンビは結構見てて楽しいですね。

(2004.09.09)


秘密屋文庫 知ってる怪/清涼院流水 (講談社文庫)

★★★  

ノベルス版の「秘密屋 赤」と「秘密屋 白」を再編集してさらに書き下ろしの「黒」を加えた完全版。

「赤」は「都市伝説」をめぐる物語。さまざまな都市伝説のルーツをさぐるうちに、 なぜか現れる「秘密屋」というキーワード。果たして「秘密屋」の正体とは? 一応それらしい仮説が立ったところに全てを根底から覆すような新説が…。

続く「白」は実在するらしい「秘密屋」をめぐる攻防。電話の対話だけで進行していくんですが、 なかなかスリリング。しかしこちらは「赤」に比べると随分とボリュームが小さく、 あっという間に最終章「黒」へと突入。

「黒」はまた「赤」「白」の前提を覆しかねない突拍子も無い話。 トップランとか読んでるんで、いまさらこの程度では驚きませんけどね。

まあしかし普通の小説ではないですね。これが「流水大説」ってやつなんでしょうか。

(2004.09.04)


BASTARD!! 黒い虹II/萩原一至・ベニー松山 (集英社スーパーダッシュ文庫)

評価保留

前作より3年も経ってようやく発売されました、第2巻。 何度も「発売予定」に入っていながら延期されてましたが、ようやく発売されました。

獣王バッハとの戦いで致命的な傷を負ったD.S.。 魔力の枯渇した大陸で少女アナの看病のもとゆっくりと回復を図る頃、 それぞれの思惑で四天王(のうちの三人)は動き始めた…。

最後に思いついた新しい理論による新呪文ってのは「七鍵守護神(ハーロイーン)」でしょうか?

結局四天王の残りの一人は出てこないのかな。 それともこのエピソードによってこの旧四天王は崩壊するんでしょうか。

しかし文章ははっきり言って表現がまわりくどかったり、 語尾が一貫してなかったり、いまいちですね。 こんなにもったいぶって出すほどの出来じゃあないよ。 さっさと続きは出して欲しいもんです。

(2004.09.01)


続 垂里冴子のお見合いと推理/山口雅也 (講談社文庫)

★★★☆ 

垂里冴子のお見合いシリーズ第2弾。

器量も性格も問題なし。しかし縁談がある度になぜか事件が巻き起こり、 破談になってしまうという、呪われた宿命を持つ垂里家の長女・冴子。 果たして彼女に春は来るのか?

フォーマットとしては日常の謎系に属するのでしょうけど、 出てくる犯罪は殺人未遂やら過失致死やらちょっと洒落にならないものも多かったり。 しかしレギュラーとして脇を固める空美や京一のキャラも立っていて、 読んでいて楽しいシリーズです。 構造上の問題があるとすれば、このシリーズを続けようと思う限り、 冴子さんは絶対に結婚できないということで…。

(2004.08.26)


試験に出るパズル 〔千葉千波の事件日記 四月〜八月〕/高田崇史 (講談社文庫)

★★★  

「QED」シリーズの高田崇史先生が送る第2シリーズ。 浪人生の「ぴいくん」と、その従兄弟で容姿端麗・成績優秀の千葉千波が送る、 ロジカル・日常ミステリ。

分類すると「日常の謎」系ですが、 しかしこの作品の場合、本筋の謎よりも、 途中で出されるパズルの方が面白いですね。 ちゃんと解答も載っているので、安心して(?)楽しめます。

(2004.08.21)


作家小説/有栖川有栖 (幻冬舎文庫)

★★★  

「作家」そのものに焦点を当てた短編を集めた、連作短編集。

「ミステリ」とはちょっと毛色が異なりますが、 作家の苦悩が窺い知れる様々な短編が収められてます。 締め切りに追われる作家の苦悩を描いた「書く機会」「締切二日前」、 マイナーな作家の作品がミッシングリンク殺人へと結びつくホラー「殺しにくるもの」、 他人のネタを使う誘惑と苦悩を描いた「書かないででくれます?」「夢物語」など。 中でも「奇骨先生」は再販制度に基づく出版界の抱える構造的な問題がわかりやすく解説されていて、 とても勉強になりました。

(2004.08.15)


人形はライブハウスで推理する/我孫子武丸 (講談社文庫)

★★★  

お久しぶりの「人形シリーズ」の4冊目。初心に戻って(?)の連作短編集です。

最初の「人形はこたつで推理する」が刊行されたのがなんと1990年なんですね。 14年前。まあ、私が読んだのはずっと後になってからなんですけど、 それでも久しぶりです。登場人物自体は覚えていたんですけど、 人間関係を忘れかけてて、朝永と睦月がいつの間にこんなに相思相愛の関係になってたんだっけ? と思ってしまいました。

今作ではついにプロポーズまでされちゃって、それを受けちゃったりして、 劇的な展開があったはずなのですが、どうもいつも邪魔が入って、 あまり仲が進展したようにも見えないところが何とも2人らしいというか。

そんなこんなで、キャラ小説として読ませていただきました。 トリックとかをうんぬんするシリーズでもないしね。

(2004.08.13)


片想い/東野圭吾 (文春文庫)

★★★☆ 

大学の元アメフト部の仲間達との同窓会の夜、現れたかつてのマネージャーは「男」の姿をしていた。 彼女の殺人を犯したという告白を聞いたかつてのQBは、彼の妻と共に彼女をかくまうことにするが、 事件はやがて意外な展開を見せ…。

ジェンダーの問題に正面から取り組んだ意欲作。 難しい題材を扱いながらも、ミステリとしても一級品に仕上げているあたりが、 さすが東野圭吾さん、という感じです。

また、アメフトのポジションがうまく登場人物の性格に絡めてあるのもうまいと思いました。

(2004.08.11)


スタバトマーテル/近藤史恵 (中公文庫)

★★★  

極度のあがり症のために声楽家になることを諦めたりり子、 若くして名声を得ながら母親無しでは作品を描けない版画家・大地。 互いに惹かれていく二人だが、何者かの強烈な悪意が邪魔をしていく…。

恋愛小説なんですが、ミステリ的要素もふんだんに取り入れられてます。 りり子に悪意が押し寄せるサスペンスシーンは、 ホントに怖くて、ホラーと言ってもいいくらい。 主人公のりり子は弱いところも強いところも併せ持ったキャラクターで、 つかみ所がないようですが、なかなか魅力的なキャラクターですね。

最後の、ハッピーエンドかと思わせて、 ひと捻りを入れてあるところが何とも近藤さんらしいというか。

(2004.08.05)


名探偵は九回裏に謎を解く/戸松淳矩 (創元推理文庫)

★★★  

幻の三部作第2弾。下町の高校生3人組の周りで起こる怪事件。

今度は野球部のコーチを中心に、トラックが暴走したり、毒入りの茶を飲まされたり、 脅迫状を受け取ったりといった、非日常的な事件が次々と起こり、 果たして誰が何のために?ってな展開になります。 探偵役は前作の力士は全く出てこなくって、和尚。 段々エスカレートしてくる事件と、 段々と勝ち抜いていく野球部が重なって、クライマックスを迎えると……。

前作もそうでしたが、動機と、実際に起きる事件の大きさとのギャップが何とも不自然なんですよね。 「そんなことのためにそこまでするか」という違和感がどうしてもぬぐえません。 出てくる登場人物はとっても魅力的なだけにそこだけがちょっと残念ですね。

次は幻の三部作中でもほんとに幻らしい「名探偵は最終局に謎を解く」だそうです。 著者の略歴を見る限り、この作品は世に出ていないっぽいですね。

(2004.08.01)


名探偵は千秋楽に謎を解く/戸松淳矩 (創元推理文庫)

★★★  

下町の弱小相撲部屋・大波部屋の周りで立て続けに起こる物騒な出来事。 砲弾騒ぎ、毒殺未遂、爆弾騒ぎ、誘拐事件…。 果たして犯人の目的と正体は?

なんと1979年の作品だそうです。 「日常の謎」系のハシリ? いや、でも起きる出来事は結構物騒ですよね。 かろうじて被害者ゼロで済んでるけど、一歩間違えれば大惨事になってたかも。

探偵役が力士ってのは初めてかも。 終わってみればなかなか読後感はよろしいのですが、 それだけのためにこれだけの大事を企むのはいくらなんでも無茶じゃないかなあ、とも思いました。

(2004.07.27)


恋恋蓮歩の演習/森博嗣 (講談社文庫)

★★★☆ 

Vシリーズ長編第6弾。豪華客船の中で消えた一人の男と一つの絵。

「恋恋」というタイトルが示唆するように、前半はラブラブモードの恋愛小説っぽく読めます。 なかなか事件が起こらないのもこの巻の特徴ですね。 そしてようやく半分を過ぎたあたりで事件が起こるのですが、 これがまた何とも中途半端というか、殺人とは言い切れないし、 盗難とも言い切れない。しかしそんな場に次から次へと関係者が集まっていく様子はなんとも滑稽で面白かったです。 で、この鮮やかな引きにはやられました。

Vシリーズって、S&Mシリーズと比べて「キャラ小説」の色がより濃くなっている感じがしますが、 この作品は前5巻の積み重ねがあってこその話という感じですね。 うん、これは文句なしに面白かったです。

(2004.07.22)


カレイドスコープ島 《あかずの扉》研究会竹取島へ/霧舎巧 (講談社文庫)

★★★  

《あかずの扉》研究会シリーズの第2弾。キャラ萌えミステリ?

個性豊かな《あかずの扉》研究会の面々。 自称名探偵の鳴海さん、本物の名探偵の後動さんがいたり、 錠前を開ける名人大前田さん、能力で事件の「予知」を見る咲さん、 そして主人公のカケルと、ヒロインのユイ。 今作も各人の個性が発揮されておりました。 咲さんの「予知」は大分オカルトがかってきましたが…。

そしてユイとカケルはもうかなり公認のラブラブっぷりですね。 最後はプロポーズまでしちゃうし(違うか)。

事件の方は、まあ面白かったんですが、ちょっとこってり盛り込み過ぎ、 という感じが。もうちょっと力抜いた感じでもいいんじゃないですかね。 次々と密室もどきやらアリバイ無き殺人やらが出てくるので、 どうにも焦点が定まらない感じで、解決されても「へえ、そうなんだ」という印象しか。 キャラ萌え要素が強い作品だからそれでもいいのかも知れませんけど、 なんかもったいないなあ。

(2004.07.17)


悪魔のラビリンス/二階堂黎人 (講談社文庫)

★★★  

「人狼城」以降に出版された蘭子シリーズ。 時間軸としては「人狼城」以前に当たるようですが、 新たな強敵・「魔王ラビリンス」が登場し、 さまざまな犯罪を通して蘭子たちに挑戦をしてきます。

今回収録されているのは、 走行中の特急列車という2重3重の密室からの人物消失を扱った「寝台特急《あさかぜ》の神秘」と、 床一面にガラスの割られた館かでおきた密室殺人を扱った「ガラスの家の秘密」の2つ。 どちらも一見完璧に見える不可能状況であって、 蘭子の超探偵ぶりをたっぷりと堪能できます。 「魔王ラビリンス」が活躍(?)するシリーズはまだまだ続きそうなので、楽しみです。

(2004.07.09)


十八の夏/光原百合 (双葉文庫)

★★★☆ 

「花」をテーマにした連作短編集。 表題作の「十八の夏」は第55回日本推理作家協会賞受賞作。

「推理作家協会賞」ということですが、それほどミステリらしくはないですね。 ちょっとした思い違いや勘違いからすれ違ったり、またくっついたりといった、 また人間の関わり合いを描いた、心温まる作品が集まってます。

その中では最後の「イノセント・デイズ」はかなりミステリ色が強く、 また中で語られる事件もかなり救いのない重いものですが、 最後の読後感はなかなかでした。 どの作品もオススメ。

(2004.07.01)


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