推理小説の部屋

ひとこと書評


船上にて/若竹七海 (講談社文庫)

★★★  

若竹七海さんの、連作ではない純粋な(?)短編集。

「相変わらず毒が強いな」というのが第一印象。 これは多分に偏見もあるかも。バラエティに富んでいて、 短編ならではの技巧を駆使しているものも多いのですが、 なんとも救いのないオチなものも少なくありません。

中では「かさねことのは」が面白かったかな。 ちょっと叙述に偏りすぎな気もしますが、叙述トリック大好き人間なので>私。

さて、6月も終わり。 現在までの読破量は55冊(上・下を分けて数えると57冊)。 年間100冊に向けて、順調なペースで進んでます。 後半もこのペースを維持できるかな。

(2001.06.30)


トライアル/真保裕一 (文春文庫)

★★★☆ 

競輪、競艇、オートレース、競馬。 公共ギャンブルスポーツを題材とした4編を収めた中編集です。

いつもながら、真保裕一さんの取材力には舌を巻きます。 よく調べてるなあ。

大金が絡むだけに、ストイックさを求められる選手たち。 八百長、不正、妨害、犯罪…芽生える疑惑。 そして、兄、夫、父との確執…。 どの作品も工夫されていて面白かったです。 一作選べと言われたら、オチの鮮やかさという点で競輪モノの「逆風」かな。

(2001.06.28)


間違いだらけのビール選び/清水義範 (講談社文庫)

★★★  

日常のちょっとした「喜劇」を扱った短編集。 ミステリっぽいのは収録作中「雨」くらいなもんで、 後は生活の一場面を描いたものが中心です。 ちょっとサスペンスっぽいのもあるけど、 基本的にほのぼの系の作品が多いです。

特にオチらしいオチもなく終わる作品も結構あるんですけど、 読後感はとてもほのぼのして良い感じでした。

表題作の「間違いだらけのビール選び」ですが、 恐らく最初に書かれた時はラガーが生になった頃だったのでしょうね。 文庫化された現在、奇しくもちょうど昔ながらの熱処理をした 「クラシックラガー」が関東地方でも発売されたところなので、 とってもタイムリーでした。

(2001.06.24)


夜のフロスト/R.D.ウィングフィールド (創元推理文庫)

★★★★☆

寡作な作家・R.D.ウィングフィールドのフロスト警部シリーズ第3弾。 ようやくの登場です。

今回のデントン警察署は、インフルエンザの流行により、 警察の人数が半分。おかげで残りの警察官達は、 昼夜を問わず狩り出されることに…。 老人を狙う連続切り裂き魔、匿名の脅迫状、行方不明の新聞配達の少女、 放火をほのめかす脅迫状…。

今回フロスト警部の下につくことになった「犠牲者」はギルモア部長刑事。 出世への野心溢れるキャリア刑事だったのですが、フロスト警部の下についたのが運のツキ。

このシリーズの魅力は、なんといっても下劣な冗談を飛ばすフロスト警部。 嘘をついて自白を強要するなんてのは序の口。 場合によっては証拠の捏造までやってのける警部ですが、 それでも魅力的に感じるのは、彼ならではの「正義」が全編に貫かれているからなんでしょうね。

巻末の著作リストによると、 どうやら「Hard Frost」「Winter Frost」なる続編が既に書かれている模様。 次のシリーズも楽しみです。

(2001.06.16)


ステップファザー・ステップ/宮部みゆき (講談社文庫)

★★★☆ 

プロの泥棒が、ふとしたことから、両親に捨てられた「おそるべき」双子の 「継父(ステップファザー)」役を演じることに…

双子の兄弟と、プロの泥棒である主人公との掛け合いが楽しい、連作短編集。 宮部さんはやっぱり少年を書かせるとうまいですねー。 活き活きしてます。 主人公がプロの泥棒であるがゆえに出てくる、 元締めの親父さんや、偽札絵師などの特異なキャラクターも楽しい。 このシリーズはまた続きが読んでみたいですね。

(2001.06.10)


上と外 5.楔が抜ける時/恩田陸 (幻冬舎文庫)

評価保留

本当は4月刊行予定だったのに、「落とした」ため、 しかも幻冬舎文庫は2ヶ月に1回しか刊行されないため、 2ヶ月遅れとなった第5巻。 しかしやはり、当初の予定通り5巻で完結するのは無理だったようで (まあ、これは4巻読んだ時点で予想はついてましたけど)、 完結はさらに2ヶ月先送りとなりました。

今までの伏線の数々が徐々に明らかに。 果たしてチカは助かるのか? 2ヶ月が非常に待ち遠しいです…。

(2001.06.09)


11文字の殺人/東野圭吾 (光文社文庫)

★★★  

ウインクで乾杯と同じく、 これもかなり二時間ドラマっぽい話ですね。 あるいは金田一少年とかにも出てきそうな (っつーか実際出てきたけど)設定。 光文社という出版社のカラーもあるんでしょうか (講談社刊のだとやっぱり本格系が多いような)。

しかし読み終わってから振り返ってみても、 タイトルにはいまいちピンと来ないですね。 作中では「11文字」に関しては最初と最後でしか触れられてないしなあ。 もうちょっとうまいタイトルはなかったのかなあ。

(2001.06.07)


きみにしか聞こえない−CALLING YOU−/乙一 (角川スニーカー文庫)

★★★☆ 

すっかりジュブナイル方面にその才覚を発揮している乙一。 帯に書かれた「せつなさの達人」という看板も偽り無く。

「Calling You」は想像で作り出した「携帯電話」を通じて会話をするようになった少女の物語。 「傷−KIZ/KIDS−」は相手の傷を自分の体に移せる能力を持った少年の物語。 「華歌」は少女の顔をした歌う花の物語。 どれもせつなさが詰まった物語。 っつーか、なんでこんな不幸な人たちをリアルに書けるんでしょうか、この人は。

「華歌」にはかなりやられました (でもこれ、イラストがかなり卑怯だと思うんだが…)。

そろそろホラー方面の話も読んでみたいですけどね。

(2001.06.03)


輝きの一瞬 短くて心に残る30編/中島らも 他 (講談社文庫)

★★★  

7〜8ページからなる「超短編」を30編収録したアンソロジー。

収録された作品はバリエーション豊富。 時代モノもあったり。 超短編ってのもいいもんですね。 ちょこちょこ読めるので、 伏線忘れることなくすぐにオチが読めます。

(2001.06.02)


ジョジョの奇妙な冒険II・ゴールデンハート/ゴールデンリング/荒木飛呂彦・宮昌太朗・大塚ギチ (集英社ジャンプJブックス)

★★★  

ジョジョ第5部のノベル化。フーゴと別れた後のブチャラティチームとの「接触」を扱ってます。

個人的に結構フーゴは好きだったので、スタンドが強すぎるが故に出てこなくなってしまったのは残念でした。 そういう意味では今回のノベルは、フーゴの「その後」が見られて大変興味深かったです。

しかしジョルノの「後期ゴールド・エクスペリエンス」が、 攻撃反射能力を備えているのは反則だよなあ、と思いました。

(2001.05.27)


緑は危険/クリスチアナ・ブランド (ハヤカワミステリ文庫)

★★★  

クリスティ・クイーン・カーらの本格ミステリ黄金期の作風を受け継ぐ、 正統派の本格ミステリ作家・ブランドの代表作。

戦禍のさなか、イギリスの陸軍病院で、老いた郵便配達夫が麻酔の直後に死んだ。 単なる事故かと思われた事件は、実は殺人事件だった。 誰が?一体どうやって?

誰にも気づかれずにどうやって殺したのか?(ハウダニット)、 動機は?(ホワイダニット)、そして犯人は?(フーダニット)、 と実にバランス良く配分された本格ミステリですね。

海外ミステリにありがちなのですが、 最初の方で各人の呼び方がコロコロと変わる(姓で呼んだり名で呼んだり愛称で呼んだり)のでなかなか入り込めなかったのですが、 人物の関係が把握できてからは楽しめました。

(2001.05.26)


ウインクで乾杯/東野圭吾 (祥伝社文庫)

★★★  

玉の輿を狙うパーティ・コンパニオンの香子。 しかしある夜、仕事先のホテルの客室で同僚の絵里が毒を飲んで死んでいた。 現場は完全な密室。自殺か?他殺か?

2時間ドラマっぽい設定(笑)のミステリ(マジでドラマ化されてても不思議はない)。 まあ、軽く読めてたまにはこういうのもいいですね。 密室トリックやらアリバイトリックやら細かい小技が散りばめられてますが、 どちらかというと主人公のキャラで読ませるタイプのミステリですね。

(2001.05.23)


誰の死体?/ドロシー・L・セイヤーズ (創元推理文庫)

★★☆  

「本格ミステリこれがベストだ!2001」で取り上げられていた古典に挑戦。

ドロシー・L・セイヤーズの作品は、これまた名作との呼び声高い「ナイン・テイラーズ」だけしか読んだことがありませんでした。 ピーター卿最初の事件らしい、この作品に挑んだのですが…。

うーん、やっぱり古すぎるかなあ。トリックも特に目新しいところはないし、 探偵は喋りすぎだし、やたらと引用しまくるし。 正直いまいちでした。

(2001.05.19)


球形の季節/恩田陸 (新潮文庫)

★★★  

恩田陸さんの第2長編(らしい)。第1長編「六番目の小夜子」と同じく、 高校生たちを主人公にした、幻想的なホラー。 今回は高校という特殊な閉鎖空間だけでなく、 東北の「寝たふりをしている」田舎町が舞台。 そこに伝わるおまじないや伝承には秘密が…。

恩田さんの作品を読んでいると、 なんというか、懐かしい怖さとでもいうのでしょうか、 子供の頃誰もが考えたことが「もう一つの世界」とか、 そういう古い記憶を刺激するような怖さを感じますね。

(2001.05.17)


完全犯罪証明書/日本推理作家協会 編 (講談社文庫)

★★★  

講談社のミステリー傑作選39。もう39も出てるのかあ。 あんまり多すぎると全部読んでやろう、という気はなくなるもんですが、 この短編集は加納朋子、歌野晶午、北村薫、の3人の名前があったので読んでみました。

なかなかの粒揃いでした。 北村薫さんの「朝霧」と柴田よしきさんの「切り取られた笑顔」は読んだことがありました。 中では唯川恵さんの「過去が届く午後」が、 短いながらもキレがあって面白かったです。

(2001.05.12)


秘密/東野圭吾 (文春文庫)

★★★★ 

映画化もされた98年のベストセラー、待望の文庫化。 事故で妻を失った主人公。しかし奇跡的に助かった娘の体には妻の意識が宿っていた…。

一気読みしてしまいました。うん、面白い。 数々の伏線が有機的に結びついていく構成は、さすが東野さん。見事です。

東野さんの作品には漢字2文字タイトルの作品が多くあります。 「分身」「変身」「悪意」「魔球」「宿命」など。 そしてこの作品も、ラストまで読んで、 あらためてタイトルの「秘密」の意味をじっくりと噛みしめることができます。

映画版は、ラストが異なるらしいので、いつか観てみようと思います。

(2001.05.10)


不連続殺人事件/坂口安吾 (角川文庫)

★★★  

やっぱり古典も読まないとね。というわけで、 純文学から飛び出た坂口安吾が書いた初の推理小説。 後ろ書き曰く「鬼才安吾が読者に挑む、不滅のトリック! すべての推理作家が絶賛する、日本推理小説史上最高の傑作」。

古典推理小説を読む場合に問題となるのが、トリックを知ってしまっていること。 この作品の場合も、トリックは以前目にした記憶はあったものの、 すっかり忘れていたつもりだったのですが、やっぱり覚えていました。 途中でトリックが割れてしまい、ちょっとそこが残念でしたね。 まあ、これぐらい有名な作品となるとしょうがないか、という気もしますが。

それにしても、文体が古いのはともかくとして、 会話が妙にリズミカルで芝居がかっているんですけど、 これって坂口安吾さんの作風なのか、 昔の人はこんな喋り方だったのか、 それとも文学者とかそういう階級の人たちはこんな喋り方だったのか…。

(2001.05.06)


本格ミステリこれがベストだ!2001/探偵小説研究会、他 (創元推理文庫)

★★   

有栖川有栖、笠井潔、北村薫の名と、300円という値段に惹かれて買ってしまいました。

しかし2000年本格ミステリ・ベスト10を見ても、文庫派の私は読んでないものばっかりだった(;_;)。

まあ、有栖川有栖、笠井潔、北村薫、の座談会が読めただけでよかったですけどね。 選べられた本格ベスト30中、既読が14、つん読1。まあ、半分ってことで。 古典もちゃんと読まなきゃ駄目だなあ、と思いました。

(2001.05.04)


不安な童話/恩田陸 (祥伝社文庫)

★★★  

私は25年前に死んだ女性画家の生まれ変わりなのだろうか?

生まれ変わりを主題に、 幻視能力を持つ主人公の女性の一人称で語られることもあり、 ひたすら幻想ホラー風に進んでいく物語ですが、 ちゃんと伏線が張ってあり、結末は(ファンタジー的な部分を残しながらも) それなりに理論的に解体されるところが見事です。 ファンタジーホラー風ミステリというか。恩田陸さんらしい作品ですね。

(2001.05.03)


金田一少年の事件簿 邪宗館殺人事件/天樹征丸 (講談社マガジンノベルス)

★★☆  

漫画の方は終わってしまった、久しぶりの金田一少年の小説版。 今回は金田一少年の6年前の友人達をめぐる事件と、 そこから起こる悲劇。

うーん、いまいち。トリックもしょぼいし。 フーダニットも、まあ納得はするけど、大したことないなあ。 金田一少年には、今時の作家が書かないような、ガチガチの古典的本格を期待してるんですけど。

(2001.04.30)


とり残されて/宮部みゆき (文春文庫)

★★★☆ 

宮部さんの短編集。SF的設定やSFっぽく見える状況を扱った作品が集まってます。 長さも趣向もバラバラでバリエーションに富んでます。

どの作品にも共通するのは「人の想い」の力、でしょうか。 それは恨みや執着といった負のパワーの場合もありますが、 そのパワーが時として奇跡を起こす、という感じでしょうか。

中では「私の死んだ後に」「たった一人」が良かったです。

(2001.04.29)


遠い約束/光原百合 (創元推理文庫)

★★★★ 

浪速大学、通称《なんだい》のミステリ研究会に入会した吉野桜子。 人間を超えた美形の持ち主いつもクールな堕天使・「ミステリ研の頭脳」若尾先輩、 いつもにこやかな公家様「ミステリ研の良心」清水先輩、 いつも元気な西部開拓者・「ミステリ研の筋肉」黒田先輩。 三者三様の先輩たちに囲まれながら、 桜子は大叔父との幼き日の約束を秘めた謎に挑む…。

大学のミステリ研を舞台にしたミステリというと有栖川有栖の「江川&アリスシリーズ」が有名ですが、 この作品もそれにかなり近いノリが楽しめます。 しかし先輩三人の描かれ方は、さすが女性作家、というか、 イラストが野間美由紀さんだからなのかも知れませんが、 とっても少女漫画チック。いや、面白いからいいんですけどね。 キャラクターははっきりしていた方がわかりやすくて面白いし。

メインとなる「遠い約束」をしっかりと根底に据えながら、 合間合間にエピソードを挟む、という構成で、 連作短編としての構成も見事だと思いました。 このシリーズの他の作品も是非読んでみたいと思わせる魅力がありますね。

(2001.04.27)


スタジアム 虹の事件簿/青井夏海 (創元推理文庫)

★★★☆ 

ドリーム・リーグに比べ、いまひとつ人気の面で劣るパラダイス・リーグ(パ・リーグ)において、 毎年最下位争いを繰り広げながらも一部に熱狂的なファンを持つ東海レインボーズ。 野球とファンをこよなく愛したオーナーが死に、一転身売りの危機に。 一方、オーナーの跡をついだオーナー夫人は、全くの野球音痴。 観戦には場違いな格好で今日も野球のお勉強。 しかし彼女には類稀なる才能がありまして…。

野球モノと安楽椅子探偵モノの融合、という世にも珍しい連作短編集。 野球音痴のオーナー夫人が、不思議な物語を聞いただけで、 野球のルールや展開と結びつけて、結論を出してしまう、というスタイル。

各話の推理は少々強引な気もしないではないですが、 レインボーズの動向と相まって飽きさせません。 登場人物の名前も、レインボーズのメンバーは全部色が入っているなど、 わかりやすくてグッド。

元々自費出版で出ていた幻の一冊だったそうで。 今回の文庫化で多くの人が見られることでしょう。

(2001.04.26)


心とろかすような〜マサの事件簿/宮部みゆき (創元推理文庫)

★★★☆ 

「パーフェクト・ブルー」の語り手だった元警察犬のマサが語る、 連作短編集。加代ちゃん、糸ちゃん、進也、といった前作でおなじみのキャラクターが 引き続き登場するので、とっつきやすいですね。

扱っている事件は、詐欺やら殺人やら。しかも結構タチ悪い事件が多いんですが、 これが宮部さんの筆力なのか、読後感はそれほど悪くないんですよね。 やっぱり私は「宮部みゆき性善説」を採りたいと思います(笑)。

(2001.04.22)


怪しい人びと/東野圭吾 (光文社文庫)

★★★  

東野圭吾さんの短編集。特に全編にテーマがあるわけではなく、 事件も詐欺や強盗から殺人まで、よく言えばバラエティに富んだ、 悪く言えばまとまりのない短編集になってます。

中では「もう一度コールしてくれ」が良かったかな。 なぜセーフだったはずの場面であの審判はアウトとコールしたのか。 真相は知ってしまえば何だ、ってなもんですが、 こんなネタでも一本の短編が書けてしまうんだからすごいなあ、と。

(2001.04.12)


崩れる 結婚にまつわる八つの風景/貫井徳郎 (集英社文庫)

★★★☆ 

貫井徳郎さん初の短編集。「結婚」をテーマにした、 主に心理サスペンス系の短編が集められてます。

表題作の「崩れる」がいきなり凄い。このテンションで続いたら身が持たないなあ、 と思っていたら、2作目の「怯える」でいい意味で裏切られました。 というわけで、各作品ともかなり趣向が違っていて、それぞれ楽しめます。 基本的には怖いですけど。

結婚が怖くなりました、なんていうお約束なオチは言いませんけど(笑)。

(2001.04.10)


死体の冷めないうちに/芦辺拓 (双葉文庫)

★★★☆ 

架空の「もう一つの警察組織」・自治体警察局特殊捜査室の活躍を描く連作短編集。 短いページ数の中に、最低1つは独特なトリックやプロットが織り込まれていて、 なかなか楽しめます。

表題作の「死体が冷めないうちに」は、アリバイトリックを扱った倒叙物ですが、 これはアンソロジー「不在証明崩壊(アリバイくずし)」で読んだことがありました。

敢えて架空の警察組織を主役に設定したことで、 「本当の警察組織」が手段を厭わなず真実を隠蔽する、 という「存在しない殺人鬼」や「最もアンフェアな密室」のような作品もありました。 それにしても警察がその気になれば普通の市民から真実を隠すことくらいわけないわけで、 怖いですね。現実の警察がここまで腐っていないことを願います。

(2001.04.07)


猟死の果て/西澤保彦 (ハルキ文庫)

★★☆  

西澤先生の、SF新本格でもなく、タック&タカチシリーズでもない、独立した長編です。 西澤先生というと、どちらかという本格・パズラーっぽい作風だと思っていたので、 この作品には正直面食らいました。 いつまで読み進んでもノレない感じで。 登場人物もなんかおかしい奴らばかりで(これはSF新本格系でも往々にしてありますが)、 感情移入できないし。

さすがに西澤先生らしく、伏線はきっちり張ってありましたけどね。 でも正直読み終わった後も納得が行きかねる点がいくつか。 なんであんな奴をいつまでものさばらせておくの?とか。 よくタック&タカチシリーズで味わう後味の悪さを何倍にも濃縮して、 作品全編にまぶしたような、そんな感じを受けました。 西澤先生の作風の広さを知ることはできましたが、 正直こういうのは私の趣味じゃないですね。

(2001.04.06)


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